第2章 顔が良すぎて前を見れない
「でね、そこの演出が凄くてさ!」
かれこれ二十分くらいはライブについて語っている。
あれを話すとこれも話したくなり、そうしている内に別の感想が思い浮かぶ。
あゆむは、うんうんと頷きながら話を聞いてくれていた。優しい。
「はぁー本当に、好きだなぁ要ユウキさん……」
ため息混じりに熱っぽく呟いた時、視界の端に誰かがいる事に気づいた。
ちらり、とテーブルの端に立つ人を見上げると、その人物──どうやら女性なようだ──が私の事を見ているのが分かった。
え?ㅤ誰?
その女性は帽子とサングラスを被っていて、顔がよく見えない。
「うぇ!?」
ずいっと、女性が顔を近づけてきた。
いや近くない?ㅤ吐息かかりそうなんだけど!?
さっきはサングラスの反射で見えなかった目が、今はよく見える。
わー綺麗な顔……。
可愛い。美しい。顔が良すぎる。
あまりの顔の良さに、私は女性のことを直視出来なかった。
こんな美人に見つめられている私って何なんだ?