第1章 白と黒、灰と雨/前編(織田信長)
戦が迫っているという話を聞いてからも
私は変わらない毎日を過ごしていた。
一歩一歩その気配が近付いて来ると思うと
まだ少し恐ろしく感じてしまうけれど…
怯えて生活するなんて
やっぱり私の性に合わないし
皆、前を向いているんだもの。
「おはようございます、迦羅様」
「あ、三成くんおはよう!」
朝から三成くんの天使スマイルは癒されるなぁ。
「いつも城内を綺麗にして頂いて
ありがとうございます」
「ううん、いいの。
こんな事しか出来ないもの」
「少しは息抜き、して下さいね?」
艶っぽく微笑んだ三成くんが去ると
今度はゆらりと光秀さんがやって来た。
「光秀さん、おはようございます」
「朝から暇を持て余しているのか?」
「違いますっ、掃除しているんです!」
「見ればわかる」
「……じゃあ聞かないで下さい」
「くっ、そう拗ねるな」
それ以上はムキに言い返す気も起きず
からかい混じりに笑い去っていく姿を見送った。
ふふっ。
何だか可笑しいけど
こういうのが、穏やかな日常なんだよね。
何でもないことで笑っていられるのが
幸せなんだろうな。
よーし、もうひと頑張りしてピカピカにしよう!