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イケメン戦国 ✿••┈恋綴る月絵巻┈••✿

第2章 白と黒、灰と雨/中編(織田信長)




光秀さんの部下だと言う人が私の元へ来たのは
信長様に関する報せを入れる為だった。




「信長様が…大怪我?」

「ええ、狙われた光秀様を守る為
 自らが盾となって傷を負ったのです」

「ええっ!?」

「残念ながら矢の受けどころが悪く
 その状態は思わしくありません。
 あとどれ程もつか……」

「…っ、そんな…」

「ですから迦羅様を急ぎ連れて来るようにと
 光秀様より遣わされたのです。
 一緒に来ていただけますね?」

「勿論ですっ!!」




思いも寄らなかった事態に
私の頭の中はひどく混乱した。

今はただ信長様の無事を祈るばかりで
不安とか恐怖とかそんなものさえ通り越して
とにかく、逢いたかった。



そして、私はこの時にはまだ
駒として使われようとしていることなど
何も、知らずにいた———








あれよあれよと言う間に久野さんの馬に乗せられ
次第に城から遠く離れて行く。


どんよりと濃い灰色に染まった空が
まるで私の心を映しているよう。

泣かないと決めた筈の心は決壊し
傷付いている信長様を想うと
流れる涙を止められない。



「気をしっかり持って下さいね」

背後からは励ますような久野さんの声。



…信長様…お願いだから、死なないで…


私はすぐに行きますから

神様、どうか信長様を、助けて——。







「心配はいりませんよ」


まるで焦りも何も無い声が、耳に触れた。


「あの男は矢で死ぬのではありません」

「えっ…」



あの男って、信長様のこと?
久野さんは何を言ってるの?
だって、信長様は敵の矢を受けたんでしょう?







「あの男は、己の犯した罪に殺されるのです」





不気味な程優しい声が耳元に寄せられたかと思うと

「んんっ…っ!!!?」


布で覆われた鼻と口元に
むせ返るような香りを感じて……




「恨むのなら、あの男を恨みなさい」






ひどく憐れむような久野さんの声。

そして揺れる視界が、真っ黒になった。






















駆け抜ける馬の姿を遠くに見ていた者がひとり。


「あれは……迦羅さん?」







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