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イケメン戦国 ✿••┈恋綴る月絵巻┈••✿

第2章 白と黒、灰と雨/中編(織田信長)




針子部屋ではいつもと変わらずに
皆が自分の仕事を黙々と続けている。


けれど中には涙を浮かべ
必死に心を繋ぎ留めている女の子も居た。

家族や大事な人が戦場に行くって
待っている立場であれば
胸が締め付けられる思いのはず。



「迦羅様も、心配でしょうね…」

「え?」


とある女の子が、涙を流しながら私に言った。
胸の傷みに歪んだ顔が
その不安の大きさを物語っている。


「そうだね、心配するのは当たり前だよ」

「でも…気丈にしていらっしゃるので
 やっぱり、お強いですね」

「本当はね、寂しくて仕方ないよ。
 でも必ず帰るって言ってくれる人を
 私は笑顔で出迎えたいから」

「迦羅様…」

「泣きたいなら我慢しないで泣けばいいと思う。
 そうしたら後は笑うしかないでしょ?」


着物の袖でグッと涙を拭ったその子は
赤くなった目のままで微笑んだ。

「はい!」








針子部屋での仕事を終えて自室へと戻り
縫いかけていた羽織を手に取る。


真っ白の上質な生地。
銀糸で繊細に入れられた細やかな刺繍。

これは信長様の為に縫い進めていたもので
もう間もなく仕上がるばかりの羽織。


信長様、戦へ出る時は黒い羽織を纏っている。
それも格好良いんだけれど…

いつも纏っている真っ白な羽織
私はあれがとても好きだった。


信長様って黒も似合うけど
白のほうが信長様そのものみたいな気がして。

…上手くは言えないけど
他の色に染まってない所が何処か——。






「よし、出来た!!」

丁寧に縫ったからだいぶ時間が掛かったけれど
やっぱり、信長様にぴったりの綺麗な白。


帰って来たら信長様にお披露目しようかな。
だって一番の自信作が出来たんだもの。

仕上がった羽織を畳んでいると
襖の向こうから人の気配がやって来た。




「迦羅様、いらっしゃいますか?」

「あ、はい!」



慌てて襖を開けるとそこに
涼やかな笑みを浮かべた家臣の人が立っていた。

確かに見たことはあると思うんだけど
…誰だったっけ?


「急にお訪ねしてすみません。
 私は光秀様に仕える久野と申します」

「あ、はい」

「迦羅様に火急の用事がありまして…」

「え?」









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