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イケメン戦国 ✿••┈恋綴る月絵巻┈••✿

第1章 白と黒、灰と雨/前編(織田信長)





私は光秀さんに言われた通り
今のうちに城下での用事を済ませておこうと
城門へ向かっていた。

仕立てた着物をひとつ納品して
それから、反物屋さんも覗いてみよう。
幾つか買っておけば安心だしね。





「出掛けるのか」

声のした背後を振り返ると
腕組みした信長様が立っていた。

「信長様!
 私、ちょっと城下に行ってきますね」

私の返事を聞いた信長様は
一緒に居た家臣に何か話したあと
大股でこちらに歩み寄り

「では行くぞ」

そう言って私の手から
風呂敷包みを取り上げた。


「え?信長様も行くんですか?」

「何だその顔は。不服か」

「まさか!…でも、いいんですか?
 こんな忙しい時に」

「やるべき事はやっている。
 何も問題など無い」


満足気に鼻で笑った信長様は
私の一歩前で足を止めた。

「さっさと行くぞ」

素っ気ない言葉とは裏腹に
すっ、と差し伸べられた大きな左手。
嬉しくて素直にその手を握ると
信長様も、嬉しそうに笑った——。








いつもと変わらない安土城下。

人通りの多い通りも
そこに居る人達も
活気に溢れた、いつもの光景。


「ふふふっ」

「貴様、顔が緩み過ぎだ」

「そうですか?そんなことないです」

否定はしてみるけれど
自分でもわかってるんだよね。
好きな人と手を繋いでいるって
ただそれだけなのに、こんなに幸せだなんて。

それに…信長様のような人が
人目も気にせずこうしてくれることが
嬉しくて堪らなかった。

だから、その幸せを伝えたくて
指先にきゅっと力を入れてみると
すかさずきつく握り返される。

伺う横顔は凛としているけれど
信長様も私と同じように
幸せだと感じてくれていると思った。


「…ふふ」

「おい貴様。
 そのにやけた顔をどうにかしろ」

「勝手にこうなるんですから
 仕方無いですよ」

「まったく、呆けた女だ」




そんな他愛無いやり取りをしながら
城下を二人で歩いて行く、穏やかな日——。













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