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イケメン戦国 ✿••┈恋綴る月絵巻┈••✿

第1章 白と黒、灰と雨/前編(織田信長)



鼻をくすぐる信長様の匂い…
着物を隔てても伝わってくる体温

触れ合うだけの口唇から
熱という熱が全身を焦がしていくよう——。


離れた口唇と同時に目を開けると
至近距離に揺れる信長様の瞳は
焼け付くような赤い色香を放っている。
躊躇いや恥ずかしさも
全部持って行かれてしまうような…



そんな熱に浮かされている私をよそに
何故だか信長様の大きな掌が
私の二の腕あたりをずっと摩っている。

「…信長様?」

「なるほど、弓のせいか」

「何が?」

「いや、随分と逞しくなったと思っただけだ」

「なっ…!!」


艶っぽい目が楽しげに細められ
口元は意地悪に笑みを浮かべている。

「変なこと言わないで下さい!」

「冗談だ」

私は妙な気恥ずかしさを覚え
未だ腕を撫で続ける信長様から逃れようと
身体を捩り、胸板を押し返す。

しかしそんな抵抗は容易く制され
逆にがっちりと腰を捕らえられてしまう。


「何をむくれている」

「ひどいことを言うからですっ…」

せめてもと顔を背けるけれど
視界の端に映る信長様は
楽しそうな笑みを消すことはなく
そんな信長様を、可愛いとさえ思った。


…惚れた弱みっていうのかな、こう言うの。


黙っている信長様が気になり
ちらりと目だけを動かして様子を伺うと
じっと見つめる熱っぽい視線とぶつかる。

「———っ…」

どくっと心臓の鼓動が騒ぎ出し
慌てて目を逸らすのと同時だった。

耳元に当てがわれた柔らかい感触と
吹きかかる熱い吐息に肩が跳ねる。
背中を這い上がる淡い快感を覚え
声を堪えてぎゅっと目を瞑ると
さらりと髪が耳に掛けられて……


「いつまでそうしているつもりだ。
 いいだろう、機嫌を直してやる」

「…直すって、どうやって?」

「貴様が一番、良く知っているはずだが」


低い声が挑発するように耳を掠め
顕になった首筋に、そしてうなじにと
次々に降る口づけを受け止めていく。

ほんの少しずつ
焦らすように暴かれていく襟元。
月灯りに晒された鎖骨には
形をなぞるように這わせられる熱い舌。

「…んんっ、の…信長…様」

「何だ」

「ちょっと…待っ……!」

寄越された上目遣いがいやに妖艶で
ますます体中が甘く疼いていく。

「却下だ」




こうしてまた、夜は更けていくのだった———











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