第1章 堕ちた先は快楽地獄【両面宿儺 虎杖悠仁】
「小僧にもまだ許しておらぬものを、この俺に許してしまうとは。小僧が知ったら、さぞ悲しむだろうな」
「なんで、しって……っ?!」
自分語りとなればよく口が回る癖に、他人の問いに答える気は毛頭ないらしい。
ふっと鼻で嘲るだけで男は質問に答えず、顎を上向かせるように掴み上げてくる。また一度近づいた距離に身体が震え、美代は恐怖からか足の力が抜けて、その場で膝から崩れ落ちてしまった。地面に倒れこむと、びしゃっという水音と共に、男が身体の上に獣の如く伸しかかってくる。
「や、やめて……触らないで……っ」
「一々騒々しい女だ。余程手酷く扱われたいと見える」
「なに、なんの、話……?」
「まだ分からんのか……無垢とは愚かなことだ」
呆れたように吐き捨てられた時、ビリビリ、という何かが破れるような音がして目を思わず目を瞠った。
男に服を破かれたのだ。それも服のみならずその下着までも。そのことに気づいて、男が何をしようとしているのか、ようやく理解できたような気がした。
その目の奥に炯々と孕む劣情の眼差しは、女を物としか思っていないような冷ややかなもので、己の欲を満たそうとするばかりのものだとすぐに察する。悠仁が普段向けるような、優しい目ではなかったからだ。
咄嗟に身を捩って男の腕から逃れようとしたけれど、男の身体の重みにそれさえも許してはもらえなかった。