第1章 堕ちた先は快楽地獄【両面宿儺 虎杖悠仁】
「さ、触らないで……」
「抵抗もせずそんな言葉が拒絶とは笑わせる。お前はつくづく愚かよな。長生きしたければ男に媚びの一つでも売る術を学べ」
「そんなの、いらない……。私は悠仁だけいればいいの……あなたのことなんて、どうでもいいわ」
「俺を前にして、よく口が回るものだ」
美代が低く唸るような怒りの声を上げれば、ソレがせせら笑う。それさえも恐ろしくて喉が凍りつきそうになる。頬を掴む指一つも払えないのは、怖くて、恐ろしくて、どうしようもないからだ。
「お前の相手であれば片手で事足りそうだが、まあ良い。精々楽しませてみせろよ、小娘______」
何かを呟いた後に、それの顔がゆっくりと近づいた。何をされるのだと身構えるのと同時に、何か柔らかな、それでいて冷たい感触が唇に押し当てられる。
自分の唇の先で男の唇が擦り合わせられて、微かな水音が奏でられた。何をされているのかとようやく察した美代の身体は、悠仁ではない禍々しいものに囚われて総毛立つ。
「ん、んぅ……っ?!」
当然のように、それだけでは終わらせてもらえなかった。愉しむような熱い息と共に、口腔内に生き物のような滑った舌が無遠慮に侵入してきたのだ。悠仁とも未だ手を繋いだだけで、キスもしたことないというのに、呼気も何もかも奪われるような熱い口付けを与えられて、目の前が絶望に染まってゆく。
必死にもがいて抵抗しようとしたけれど、男のあまりに強い力にそれさえも許してもらえず、舌先を吸われて口腔内を満遍なく蹂躙されて、身体の力が自然と抜け落ちてしまう。