第2章 僕の可愛い小鳥の飼い方【五条悟】
「ちょ、悟?!」
「ほら、お前も脱いでよ。それとも脱がせて欲しい?」
「い、いい!自分で、脱ぐから……!」
どうやら、本当に今から始めるらしい。そのつもりで来たのは美代だが、まさかこんなに早くコトが進むとは思っていなかったので、どうすれば良いのかなんて分からなかった。
思ったよりも呆気なく誘惑に乗ってくれた悟に困惑しながらも、彼は上半身に身にまとっていたものを全部剥ぎ始めたので、美代も真似をするように下着以外のものは取り払う。身に守るものはついには下着だけになってしまい、部屋の片隅で身を小さくして悟をじっと見つめた。
「……っ」
幼馴染のことならなんでも知っていると思っていたけれど、どうやらそんなことはなかったらしい。
つい目を奪われてしまうほど完成された逞しい肩や胸板は、服の上からでは予想し難いものであった。普段の姿見からするにやや細身であるようにも見えた悟の肉体は剛鉄のように硬く、筋肉の重々しさと男らしい鋭さを漲らせている。それなのに、肌の白さのせいか赤黒く獣染みたものではなく、男にしてはあまりに美しく滑らかな肉体は、まるで研ぎ澄まされた彫刻のようでもあった。
異性の生身の身体を目にするのは初めてのことで、思わずごくりと息を呑むと、悟がふっと笑みを落とす。
「なに、見惚れちゃった?」
「や、そういう、わけじゃなくて」
「今日くらい素直になればいいのに……ほら、おいで」
悟はベッドの上で足をくつろげると、美代を導くように腕を広げた。
優しい口調とは裏腹に、その目に秘められた感情は真っ黒に染まっており、やはり彼が少しだけ怖いと思った。
けれど、自分から頼んだので逃げることもできなければ、自分が望んでいたことなのに今更になって怖くなってしまったことを悟には知られたくなくて、ゆっくりと悟の胸の中に顔を埋める。
互いに触れ合う素肌の感触。高鳴る心臓。男の人の匂い。息遣い。何もかもが未知な世界に、五感がいつになく過剰に反応していた。
「顔あげて、こっち向いて」
言われるまま顔を上げると、目の前には悟の整った顔立ちがある。そのまま細く長い指先で顎を掴まれ、上向かせられ、ゆっくりと顔が近づいたその時、何をされるのか察して、咄嗟に悟の頬を押さえて阻止をした。