第2章 僕の可愛い小鳥の飼い方【五条悟】
「……それが理由?僕の気持ちはどうでもいいんだ?だとしたら、本当に残酷だよね、オマエ」
雰囲気から察するに、喜びの表情ではないということだけはわかった。やはり、心腹の友と言うまで内側に触れてしまった為か、躊躇いがあるのかもしれない。それとも、ただ単に自分に女としての魅力がないだけなのかもしれない。
どちらの理由にせよ、つい先日振られたばかりでもあるので、悟にも断られてしまうのではないかという不安に自尊心は今にも砕け散ってしまいそうだった。
「あ、いや、えっと、本当に無理にとは言わないから!嫌だったら断って……」
「いいよ」
悟の口から溢れたのは、予想外の返事だった。
しかし、承諾したとはとても思えないようないつになく暗い瞳が、こちらを睨むように見据えている。それが堪らなく恐ろしいものにも見えて、背筋に冷たいものが走った。
「僕に抱かれたいんでしょ?だったら、脱いで」
「え……?ま、待って!今から?!ちょっと、シャワーだけ浴びさせて!」
「ダメ」
我儘を言う子供のような口ぶりだった。
戸惑いに悟を見上げると、いつになく彼の背丈がぬっと大きく感じた。隣に並ぶことはよくあることなのに、普段とは別の人を前にしているように感じる。それはきっと、普段あまり見ないような怒りにも憎悪にも似た冷酷な目をした彼を前にしているからだ。
悟は美代の全身を確かめるように眺めた後、何一つ言葉にしないまま上着を脱ぎ始めた。