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【呪術廻戦】執愛

第2章 僕の可愛い小鳥の飼い方【五条悟】




 ______失恋した。もうどうでも良い。
 その勢いで処女を捨てようと思った。慰めの一夜なんて馬鹿みたいな話を軽々しく口にするのはどうかと思うけれど、そうでもしないとこの行き場のなくなった感情はどうすることも出来ない。
 だから、言ったのだ。長らく幼馴染をしてきた五条悟の部屋に押しかけて「処女を貰って欲しい」と。
 
「ちょっと待って、何言っちゃってんの?」
「何回も言わせないでよ……処女を捨てたいから、悟に奪って欲しいの」
「意味はわかった。分かりたくないけど、凄く分かった。でもさ、なんで僕に頼んだの?」

 黙っていれば誰しもが美男子だと崇めるほどの端正な顔立ちが、戸惑いに歪められた。彼は何しろ見目が良いのでモテる。身長だって高い。クズだなんだと周りからは言われてきているものの、幼馴染をしてきた美代からすれば、結局彼は優しいところもあるとは思う。
 欠点を挙げるのならば……お互いを知りすぎてしまったことなのかもしれない。知りすぎてしまったから、こうして真夜中に悟の部屋に飛び込むことだって厭わなかった。

「失恋した。だから、私を抱いて」
「うん、それはさっき聞いたよ。どうして僕に頼んだのかっていう理由を聞いてるんだけど」

 さらり、と白銀に輝く髪も相変わらず線が細く透明的で、それに嫌な異質さを感じさせないのは彼の姿見はどこもかしこも欠陥がないからだ。前髪の隙間から射抜く瞳は、いつか訪れた沖縄の海の色を思い出させるような澄み切ったスカイブルーの色をしており、どうにもその目で見つめられると美代に限らず、誰もが怯むことだった。
 それこそ、眼力だけで人を支配するのも容易なのか、何も言えなくなった彼女が先に根を上げる。

「失恋したから……本当に理由なんて、それだけ。七海か悟、どっちかに頼もうとした。けど、七海は絶対に断ると思ったから、悟に頼んだ」

 少しだけ妬んでいたのだ。幼馴染があまりにも女の子にちやほやされるのも、神様が寵愛した神の子しか授かることが出来ないような圧倒的な強さも、権力も、容姿にも。だから、彼女は悟に皮肉めいたように言ってしまったのである。
 それを聞いた悟は、長いそれはとても長い溜息を吐いた。気のせいだろうか。刹那に、悟の目の輝きが失われてゆくような気がした。


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