第1章 堕ちた先は快楽地獄【両面宿儺 虎杖悠仁】
「ならば、俺からこの娘を奪い返してみればいいだろう。お前にできればの話だがな」
「ゆ、悠仁……」
ふっと嘲る宿儺の視線の先には、怒りでどうにか奮い立たせているとでもいうように、血塗れになりがくがくと震える悠仁の二本の足がある。立っているのが精一杯だというのがはっきりと伝わってきて、痛ましさに胸が痛む。
「悠仁、大丈夫、来ないで、私なら大丈夫、だから……」
「なに、言ってんだよ……お前、今にも泣きそうじゃん。怖いんだろ?大丈夫だ、宿儺に何脅されたのかしんねぇけど、俺が絶対に助けるか______」
「やめて!」
悠仁の優しさが、今は辛かった。
彼の痛ましい姿を目にして、もうやめて欲しいという願いばかりが胸に生まれる。
このままでは、悠仁が死んでしまうかもしれない。酷いことをされるかもしれない。それなら、美代がただ目を瞑っている間に、宿儺の好き勝手に身体を弄ばれた方が良いと思った。
処女の喪失は痛いと聞いたことがあるし、初めては好きな人としたいという思いもあったけれど、二人が生きてさえいればそれでいいのだ。
だから、覚悟を決めていたというのに、どうして悠仁は引き下がってくれないのだろう。