第1章 堕ちた先は快楽地獄【両面宿儺 虎杖悠仁】
「宿儺……てめえ、今すぐその汚ねえモンをそいつから退けろ!!」
その時、吹き飛ばされて意識を失っていたはずの悠仁の叫び声が響き渡り、二人の視線が同時にそちらに向けられた。
悠仁は、見ないで欲しいと懇願するように切なげに震える美代の瞳と、一方で口角を上げて愉悦に瞳を細める宿儺を交互に見遣ると、状況を呑み込んだようで怒りからか全身を震わせる。
「良いところで目が覚めたな、小僧。今しがた、この女を俺のものにしようと思っていたところだ」
「……ふざけんなよ、宿儺。そいつには手ぇ出すな」
「戯け。この小娘が自ら俺に抱かれることを望んだのだぞ?」
「は……?そんなわけねえだろ。こいつの目見たら、そんくらいわかる。てめぇが無理やり犯そうとしてんだろ。悪趣味な野郎だな。さっさと離れろ」
満面朱を注いで低い声で宿儺に激憤する悠仁が、いつになく怖くて、恐ろしい。
しかし、それに対して情けない自分の姿を見ても尚、信じて怒ってくれる悠仁に胸がジンと熱くなるのを覚え、またしてもぼろぼろと泣き出してしまいそうになった。