第1章 堕ちた先は快楽地獄【両面宿儺 虎杖悠仁】
「やめて……!悠仁に酷いことしないで!」
「はあ、口を開けばやめろと、それしか喋れんのか」
「だ、だって……!」
「なら、特別に選ばせてやる。この小僧が消えてお前が助かるか、お前が体を差し出して、この小僧を助けるか」
その選択肢を与えられて、背筋がさーっと冷めてゆくような気がした。
ちらり、と弾き飛ばされた悠仁を見れば、辛うじて起き上がることはできていたものの、既に頭部からも足からも血を流しており、ふらふらとすぐにその場に倒れ込んでしまう姿が映る。
悠仁が消える。男はそういった。
つまり死ぬということだろうか。
分からないけれど、男の圧倒的な力を目にした後では、それも可能なのではないかと思った。例え美代と喧嘩の強い悠仁が二人で飛び掛かろうとも、宿儺からすれば赤子の手をひねるようなものなのだ。
彼も自分も死なずに生きて帰れるというのなら、選択肢は一つしかなかった。
「悠仁を、助けて……」
懇願するように弱々しい声を上げると、宿儺は下卑た笑みを浮かべた。
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