• テキストサイズ

*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第10章 *File.10*(R18)


「突然の連絡と、深夜に申し訳ございません。風見ですが、今から迎えに行きます」
「…分かり、ました」

全てが終わったと、風見さんから連絡があったのは、快斗に会った三日後の真夜中のことだった。


「すみません。子供みたいなことして」
「いえ、お気になさらずに」

真夜中の静まり返った、広い院内の薄暗い廊下を二人で歩く。
私の指先は、少し前を歩く風見さんのスーツの裾を握り締めていた。
消灯して暗いから、真夜中の病院の雰囲気が怖いんじゃない。
ようやく景光に逢える喜びと、不安で胸が押し潰されそうで怖いから。
喜びより恐怖が勝り、車の中では会話もロクに出来なかった。

「こちらです」

最上階の、言えば、警察官専用の病室。
オマケに公安部だから、VIP扱いだ。
一般人は、簡単に出入り出来ないフロア。
コンコン

「どうぞ」
「!」

とりあえずは普通に会話は出来る、らしい。
風見さんが扉をスライドさせると、蛍光灯の明るさに目が眩む。

「風見さん、有難うございました」

普段通りの景光の声。

「いえ。降谷さんの病室は隣の601号室です」
「…有難う」

ゆっくりと顔を上げれば、風見さんが少し驚いた顔をした。

「?」
「もう、大丈夫ですよ」

ポンと軽く肩に触れられるとふっと力が抜けて、足元から崩れそうになったのを受け止めてくれた。

「雪乃?!」
「諸伏さんの声を聞けて、やっと緊張が解れたみたいですね」

失礼しますと、一言添えて抱き上げてくれると、ベッドの傍に用意してあった椅子へ下ろしてくれた。

「大丈夫、ですか?」
「はい。色々と有難うございました」
「いえ。では、失礼します」

眼鏡の奥の眼光を少し和らげると、風見さんは静かに扉を閉めて病室を離れた。
刑事部にあんな態度取るのが勿体無い。
ホントはこんなに優しい人なのに。

「雪乃?」
「……」

極力、顔を見ないようにしていたのに気づいていたらしく、伸びてきた腕は私をきつく抱き締めた。

「ただいま」
「おかえり、なさい。無事で、よかった」

逞しい身体にはあちこち包帯を巻かれ、消毒液や湿布の匂いがした。
生命を落とすことなく、諸伏景光が生きて今此処にいる。
それだけで、私は幸せなはずなのに。
涙が止まらない。
吐き出せずに押し止めていた様々な感情が一気に解放されて、止められない。


/ 221ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp