第9章 *File.9*(R18)
今は未だ、迎えには行けないけど。
近い未来に必ず。
「うん。約束する」
ふわりと幸せそうに微笑むと、小さな掌でオレの頬を包み込んで、雪乃はチュッと可愛くキスをしてくれた。
「何時、何処にいても忘れないで。オレが雪乃を愛してること」
もしかしたら雪乃にとって、重い言葉と感情かもしれない。
だけど、オレの生命は何時だって、安全な場所にあるわけじゃない。
寧ろ、何時だって、真逆の場所にある。
「私もよ、景光。でも…」
「でも?」
「相手が恋人とは言え、寝込みを襲うのはどうかと思いますよ?ヒロミツさん?」
メッと幼い我が子を叱る母親みたいに、柔らかで温かな愛情を含んだ眼差しで、真っ直ぐにオレを見つめる。
「それは全面的に謝罪します。ごめん」
「ふふっ」
本当は全然怒ってなんかないよ。と、優しい笑顔がそう言ってる。
キミはどれだけの愛情で、オレの心を満たしてくれるんだ?
「私の方こそ、ずっと黙っててごめんね」
「ああ」
雪乃。
キミの願いや想いは、オレなりに少しは理解出来てると思うから。
「ありがと」
「もう一度、抱いても?」
「一度だけ、なら」
「どうして?」
それは絶対に無理。
「朝起きたら、仕事です」
「大丈夫。朝ご飯はちゃんと用意するから」
「そういう問題じゃないのっ!」
「まだ、夜は長いよ」
「ひ、景光っ!」
「はいはい」
オレは笑顔で雪乃を見下ろすと、遠慮無しに唇を重ねた。
さあ、今夜はどうやって抱き尽くそうか?
とは言え、キミの意見は一切聞いてあげないけどね。
未だに逢えなくて連絡もロクに出来ないのはオレのせいではあるけど、それでも班長のことを一年以上何も知らされなかった。
オマケにそれを聞いたのは、松田の口から。
その件に関しては、オレにも譲れない想いがあるんだ。
何時ものように一度触れると止まることは出来ず、雪乃を抱き尽くしてしまった。
疲れ果てて向かい合って眠る雪乃の髪を撫で、少しの謝罪の意を込めて額に一つキスを落とす。
「景光…」
「ん?」
閉じていた瞼がゆっくりと開くと、
「貴方の傍が、一番…好き」
「!」
柔らかな声と共にふわりと微笑んだ後、そのままストンと眠りに入ってしまった。