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*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第8章 *File.8*


「雪乃に助けられ、俺達は死ななかった。でもこの事を知っているのは、俺達四人と雪乃だけ。もし、俺達や雪乃の介入によって誰かの進むべき未来が変わってしまったとしても、それを知る者は誰一人としていない」
「もしそれを知る者がいたとしてもそれは、この世でたった一人…」
「雪乃だけだ」

雪乃は…。
松田を助けると決意した時点で、そこまで考えていた。
もし松田やゼロと今のような良好な関係にならなくても、絶対にみんなを助けたんだ。
例え、想いが通じることなく、オレの恋人にならなくても。
たった、独りきりでも。
自分が考えられる、最善の限りを尽くして。
出逢ったあの日に、オレに言った。
一度は喪った生命なんだと…。
だからもう、死ぬことは恐くないのだと…。
何をどう考えたって、そんなことがあるはずがないのに。
これは雪乃の中で決して揺らぐことも変わることもなく、何時何処に居ても心の奥深くにある想い。

「オレ達五人がこれ以上誰一人欠けることなく、オレの、ゼロの松田の、班長の幸せのためだけに、その生命を懸けた」
「とてもじゃないが、感謝してもし切れないな」
「…ったく、なんてオンナだよ」

ゼロは大きく目を見開くと両手の指を絡めて俯き、松田はソファに凭れて天井を見上げ、暫くの間、深い沈黙が降りた。


「一つ聞いても?」
「何を?」
「雪乃は何故、松田だけにその話をしたのか?だろ?」
「ああ」
「そりゃ、お前の為だ。諸伏」

あっさりとした返事が返って来た。

「オレ、の?」
「雪乃だけが知る、物語上の問題なのは分かる。でもそれなら何故、今回は松田の時みたいに一人で行動しなかった?」
「俺はあの日、雪乃から遺書を手渡された」

松田は軽く瞼を伏せてから、そう静かに応えた。

「「遺書?!」」
「話を打ち明けられた俺の役割は、もし自分が死んだ時、諸伏、お前に遺書を必ず届ける。ただ、それだけだ。万が一があった時にと言い聞かせてギリギリまで傍にはいたが、手助けをして欲しいだなんてことは、一言も聞いてねえよ」

再び開いた瞳は、真っ直ぐにオレへ向けられた。


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