第7章 *File.7*
「怪盗キッド?」
どうしてもこう、次から次へと…。
今夜二人が出会ったのは偶然か、はたまた必然か。
サイドテーブルには彼からのメッセージ、スマホ、缶チューハイの空き缶。
「原因はこれか」
アルコール度数5%で、これ?
だから普段も飲まないのか。
明日は仕事が休み、なのは知っている。
「!」
その時、ふわりと香ったのは見知らぬ匂い。
若々しくもあり、清涼感のある男の。
だが、嫌味はなくて、いっそ潔ささえ感じる。
ワザと、か。
オレが直ぐに此処へ駆け付けると、分かった上で。
「敵か味方か」
雪乃は彼の味方。
これは決定事項だ。
こうして直接関係を持つ持たない以前に、彼の存在さえも知っていたはずだ。と言うことは、時間が経つにつれてこんな人間が増えるのか?
「やれやれ」
とりあえず何事もなくて安心はしたが、
『中身もちょー素敵なイケメン彼氏さんへ
まだ名も知らぬ可愛い彼女さんが
お酒を飲みたい時は傍にいてあげて下さい
本音がダダ洩れですよ?
あと無防備過ぎて大変危険ですので
くれぐれもご注意を』
「……」
何だか無性に腹が立つ。
まだオレが知らない雪乃の一面を他人に見られ、指摘されたから?
『まだ名も知らぬ可愛い眠り姫へ
次にお逢いした暁には
貴女のお名前を是非聞かせて下さい
お逢い出来るその日を楽しみにしています
貴女の味方 怪盗キッド』
「……」
寧ろ、もう二度と会わなくていい。
このカードを読んだら、怒りは増した。
確実に。
肝心の雪乃は、何も知らずに無邪気な顔をして寝ているし。
よし、帰るのを止めた。
こっそりと休みを合わせておいてよかったよ。
こんな予定にするつもりはなかったけど、もうなるようになればいい。
「っン……」
「!」
なんて声を出すかな?
意識しないようにしてたのに、こんなに艶のある声を聞いてしまったら、嫌でも身体が反応してしまう。
「…う、ん?」
軽くだけど抱き締めてるから、上手く寝返りが出来ないのが気に入らないのだろう。
眉間にシワがよる。
「くくっ」
3、2、1。
「ん?景光?何で??」
「さて、どうしてでしょう?」
暗闇の中で、雪乃の瞳がパチリと開いた。