第6章 *File.6*あれから約二年半後*
デザートの半熟ケーキを口に放り込んで、プイと顔を反らす。
「あー、勿体ねぇ」
「俺もこないだ初めて思ったよ」
「へえ。お前が?」
「自分でも驚いた」
カラン♪
「「「えっ?」」」
また来客?
三人揃って振り返ってドアを見ると、
「どうして三人揃ってるワケ?」
肩で息をして、景光がやって来た。
「……」
何かあった。
ワケでは、なさそう?
「いや、お前の方こそ、なんでこのタイミングで来るんだよ?」
「そろそろGPSを消すことを、本気でお勧めするよ」
私の肩にポンと触れて、ゼロは洗い物を始める。
GPSって、景光が入れたスマホのアプリ?
「私は先日の謝罪に」
「俺はたまたまメシ食いに」
「俺は今日は閉店を頼まれてる」
「油断も隙もない」
「偶然だっての!お前も何とか言ってやれ!」
「何か心配するようなことが、あるの?」
「「……」」
ゼロ、陣平、景光の順に顔を見つめてから、首を傾げる。
「喜ぶべき、なのか?」
「いや、叱るべきことだろう」
「それは心当たりがあるから?」
「……」
何か急にトゲのある、異様な雰囲気が漂って来て怖い。
「俺はないとは言い切らねえからな」
「だろうね」
「…俺も」
「ゼロ!?」
「呑気にタカ括ってたら、何時か自分に跳ね返って来るぜ?ヒロの旦那」
「いい薬役にはなりそうだ」
陣平とゼロは視線を合わすと、ニヤリと楽しげに口許を上げた。
「??」
「……」
そんな親友二人を見て、何故か不機嫌丸出しで珍しく唇をへの字に歪ませる景光を見上げると、やっぱり私は首を傾げたのだった。