第1章 *File.1*
「すみません。松田さんの想い人は、確か千速さんでしたね。まだ片想い続行中ですか?」
「「ぶっ」」
ギロッと目を釣り上げた松田に対して、俺と景光は顔を見合わせるなり、声を上げて笑った。
「喧しいっ!!」
「それはすみませんでした」
彼女はやっぱり表情を変えることなく、照れと怒りが混じって赤くなった顔の松田にペコリと頭を下げて謝罪した。
恐らく彼女は、ワザと俺や松田に嫌われるような発言をしている。
それに気づいている、景光。
で、まんまと素直に騙される、松田。
全く分かりやすい性格だよ、お前は。
とか言う俺も、とてもじゃないが彼女の言動を信じることは出来ないから、当面は松田側にいることにするよ。
それでいいか?景光。
視線で問いかければ、まだブツブツ文句を垂れて怒っている松田の隣りで、景光は軽く頷いた。