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*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第6章 *File.6*あれから約二年半後*


「そうじゃないだろ」

ゼロは抱き締めていた腕を離すと、私の肩を押して景光に引き渡した。

「雪乃」
「…景光」

腕を引っぱられ、きつくきつく抱き締められると、私の全てを包み込むように、頭上に景光の額が触れたのが分かった。
その声で名前を呼ばれるだけで、こんなにも心が満たされるなんて。
変わらない、景光の温もりと香り、息遣い。
私の幸せは、此処にある。
今、此処に。
今、この瞬間に。

「やれやれ。俺は戻るよ」
「有難う、ゼロ」
「ああ」

返事と同時に、パタンと扉は閉まった。

「景光」
「うん」
「逢いたかった」
「オレも」
「淋しかった」
「ごめん」
「ううん、景光が謝ることはないの。ただ、考えていたより、覚悟してたよりもずっとずっと辛かっただけ」

そう、貴方のせいじゃない。
貴方の日常に、あの日突然勝手に割り込んだのは私の方なんだから。
でもね、貴方が傍にいない生活は何時まで経っても慣れなくて、ただ酷く切なく哀しいものだったの。

「毎日、ただ雪乃に逢いたくて、触れたくて、抱き締めたくて、抱きたくて、おかしくなりそうだった」
「……」

うん?
抱きたくて??
さり気なく、なんてセリフをぶっ込んでるの??

「あ、泣き止んだ」

頭上でクスッと笑い声が聞こえたから、つられるように顔を上げる。

「冗談?」
「まさか。100%本気だよ」

セリフに似つかない笑顔を見せながら、濡れた頬を温かな指先で拭いてくれる。

「……ブラック景光」
「嫌い?」
「じゃないから困ってる」
「くっくく、有難う。早速だけど移動しようか。このまま何時までも、此処にいるワケにはいかない」
「ん」
「ゼロに雪乃の裸は見せられないからね」
「へっ?」

いやいや、呑気にウインクしてサラッと言うセリフじゃないから!

「出逢った頃のまま、可愛いよ、雪乃は」
「!」
「それに。とても綺麗になった」
「……」

急に真顔で言わないで。
今は嬉しさよりも、切なくなるから。
思わず、伸ばした指先で景光の服を掴む。

「……雪乃?」

驚いたように少し目を見開いてから、額に優しいキスを一つくれた。
ああ、このヒトが好きだ。
もう愛しくて、触れたくて、想いが溢れ出して止まらない。


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