第4章 *File.4*(R18)
自身を引き抜くとベッドに座り、自分の前に座らせて抱き締めた。
「理由なんてないよ。ただ、雪乃を愛してる。それだけ」
「お、お気持ちだけで、今は十分です」
「オレが十分じゃない。絶対に離さないし、雪乃は誰にも渡さない」
そう、誰にも。
ゼロにも、松田にも。
あー、なるほど。
「……まだ怒って、る?」
「松田にキスされたこと?」
雪乃を抱き尽くしたい原因の一つ、か。
「…うん」
「あの時はまだお互いに気持ちを伝えてはいなかったから、オレは文句を言える立場でもなかったし、松田が一方的にしたことだし、オレも油断してたし、まさかの展開だったし……悪いのは松田でいい、かな?でもやっぱり、嫉妬はする」
「……嫉妬?」
「松田は雪乃の初めてを奪ったから」
ぎゅうと背後から抱き締める。
それに…。
松田が自分の想いを行動で示したからこそ、オレは動けた。
もし松田があの時何もしなかったら、きっと今のこの時間はなかった。
時間はまだあると自分の中でズルズルと先延ばしにして、この想いを伝えることさえしなかった。
それがとても悔しくて、男として情けない。
それから、それよりも何よりも。
オレが、松田を止められなかった。
あんなに狭い空間だったのに、ただ為す術なく見守ってしまったんだ。
二人の唇が重なった瞬間も、対象的な二人の表情さえも、この目でしっかりと見てしまった。
忘れたくても、絶対に一生忘れられない。
「じゃあ…」
「?」
「これからたくさんしようよ。私と景光の初めて。ね?」
と、雪乃は斜め後ろにオレを見上げて、明るく可愛い笑顔を見せた。
「……キミってヒトは」
どれだけオレを喜ばせてくれるんだ?
なのに、全くを持って自覚がない。
「うん?」
「好きにならないワケがないだろう?」
「……わっ!」
クルンと身体を回転させて、雪乃を上から見下ろす。
「…雪乃」
「景光」
絡めた指先に軽く力を込めて、ふわりと微笑んだ雪乃と唇を重ねた。