第4章 *File.4*(R18)
拒否るはずがないことが伝わってる。
本当は貴方に触れられて、泣くほどに幸せで嬉しいことさえも。
そして、長い別れの時間が刻一刻と迫っていることにもお互いが気付いてる。
「……ひ、ろ」
「ん?」
「!!」
名を呼んでからゆっくりと瞼を開くと、胸元で顔を上げたオトコの顔をした景光と視線が絡み合う。
あー、呼ぶんじゃなかった。
アカン。
タイミングを間違えた、明らかに。
また全身からお色気が爆発してて、私の身体の奥がドクンと高鳴った。
完全に自爆したわ。
「顔真っ赤」
「あ、あの。何もない、です」
「それでオレが引き下がるとでも?」
元の位置に戻ってしまった景光が、また真上から見下ろしてくる。
「……まだ、ちゃんと伝えてなかった。から」
「何を?」
きっと一度でもこのまま抱かれてしまったら、言えなくなると思うから。
「景光」
「うん」
「愛してる」
「!!」
大きな衝撃を受けたように、景光の目が大きく見開かれた。次の瞬間、きつく抱き締められる。
ふわりと景光のいい香りがした。
「顔真っ赤」
「ズルいな、雪乃は」
ふふっと笑えば、恥ずかしそうな、照れた景光の声が耳元で聞こえる。
「景光ほどじゃないっ」
「じゃあ」
「うん?」
何か、ちょー嫌な予感が。
「雪乃の言う通り、もっとズルい男になるよ」
伸びて来た大きな掌は、私の頬をそっと優しく包み込んだ。
「えっ?」
「もう待たない。愛してる、雪乃」
「!」
唇が触れる距離で囁かれた言葉。
ホントに狡い!
愛情が溢れる優しさの中に、迫る別れの切なさが交じる表情を見せられたら、もう何も言えないじゃない!
今はただ、景光から与えられる全てを受け入れるしか術がなかった。