第4章 *File.4*(R18)
困ったように笑って、オレの目を真っ直ぐに見上げた。
「場所を移すよ」
「ん」
このままだと湯冷めさせてしまうから、抱き上げて寝室に連れて行くとベッドに下ろし、二人で布団にくるまった。
「…私がね」
雪乃の澄んだ綺麗な瞳が、オレの目だけを捕らえる。
そして、ゆっくりと語り始めた。
「一番助けたかったのは、陣平でもゼロでも、班長でもなくて」
「…誰?」
「景光、貴方なの」
「!!」
言い換えれば、オレは近い未来に、死ぬ。
そういうコトになる。
「貴方がこの世界で生きなきゃ、私は何の為にこの世界に来たの?」
「……!」
「これから先、私を嫌いになってもいい。私の存在を忘れ去ってもいい。元の世界に戻ってもいい。私はどうなってもいい。景光と二度と逢えなくなってもいい!ただ、貴方だけは死ぬことなく、この世界でゼロと陣平と班長と長い人生を笑って楽しく生きてっ!それだけがこの世界に来た私の、たった一つの望みなんだからっ!」
負けたよ。
もう、完敗。
なんて愛の告白だよ。
出逢う前から、こんなにも想われていたなんて、一体誰が想像した?
だから、ゼロでもなくて松田でもなくて、別の世界からオレの元へとやって来た。
あの時、一番最初にオレの年齢を聞いたのは?
松田が、オレが何歳で、何が原因で死んだか知っていたから。
この世界で生きているのなら、松田を、オレを助けられると考えたから。
オレが気付いていなかっただけで、最初から答えはあったんだ。
初めて出逢ったあの日。
殺されるのなら、オレがいい。と。
ハッキリとそう告げた言葉とは真逆の感情を見せた、あの切なげに揺れた瞳のワケは?
二次元の世界で死んだオレを、好きだったから。
一番逢いたい人には、逢えた。
それはオレだった。
元の世界に帰りたくは無いと少しでも思ってくれたのは、此処に来てオレに出逢い、この世界で生きるオレを愛してしまったから。
出逢ってからの雪乃の言動の謎が、彼女が言葉に出来ずにいた、心に秘めていた想いが一気に解けて行く。
溢れ出した涙を拭いてあげる余裕もなくて、そのまま雪乃をきつく抱き締めた。
もう、我慢なんかしてやらない。って言うか、風呂場に行った時点で、我慢する余裕も全くなかったけど。
「…景光?」
「一生分の告白として受け取るから」
柔らかな髪に口付けを一つ。
