第2章 *File.2*
何だよ。
口許を押さえて、明らかにしまった!ヤベッ!って、その顔。
「何時から?」
「……」
「都合の悪い時だけ黙秘すんな」
「貴方にそう言われるだろうから、頑張ってたのに」
「答えになってねえな」
「か弱い女の子にすごまないで下さい」
プイと顔を反らしたまま、また敬語。
「何かすっげえ腹立ってきた」
「はあ?ワケわかんないんですけど?」
どっちが本当のお前だよ?
このまま今すぐ丸裸にして、コイツの全てを暴いてやりたい。
何故か、無性にそんな激しい感情が一瞬で渦巻いた。
「あんだよ?」
一体どんなタイミングで連絡してきやがる。
個別にもう一個盗聴器仕掛けてやがるな、諸伏のヤツ!
「分かった」
とりあえず逃がさないように、左手はまだ雪乃を抱き留めたまま、頷く。
「行くぞ」
「……」
「別に減るモンでもねえだろ」
無言のまま、視線の先にあるのは、指先を絡めた俺と恋人繋ぎをした掌。
「…初めて」
ポツリと呟かれたのは、やっぱりただの初心な可愛いオンナの表情とセリフ。
「お前、それが素か」
「!」
「今更遅えよ」
我に返ったように、上目遣いで首を振って否定してもムダムダ。
手を繋いだまま、空いてる手で前髪を避けると、そっとキスをする。
まるで恋人同士だな。
「?!」
再び顔を真っ赤に染めて、空いてる手で俺が触れた額を押さえた。
「雪乃、お前可愛いすぎ」
反応がいちいち可愛い。
なんなんだ?この生き物は。
数分前までの雪乃とはまるで別人。ってことは、雪乃が作り上げた人格に、まんまと騙されてたのか!
俺とゼロは!
「…名前」
「好きに呼べよ」
「そっちじゃなくて」
「そっちもあっちもねえ」
「じゃあ、陣平って呼ぶ」
「いきなりかよ?まあ、雪乃らしくていいか」
「ありがと」
「…何が?」
諸伏との待ち合わせ場所に向かいながら、急に礼を言われて驚いた。