第2章 *File.2*
「私を認めてくれた。から」
ああ、ついさっきまでの俺は雪乃の存在自体を受け入れずにいたんだと、改めて思い知らされる。
諸伏は、初めて出逢ったあの夜から受け入れていたんだ。
望月雪乃という、一人の人間の存在を。
雪乃の正体がどうであれ、諸伏にとっては心を許せる、彼女の言動は信じられる存在だった。
アイツ自身の直感以外に、何のきっかけがあったのかは、まだ聞いてねぇけど。
「悪かった」
「さっきの、そういう意味?」
「ああ」
「もう、いいよ」
「そんな簡単なことじゃねぇだろ」
顔を合わせる度に、俺のお前に対する態度でどれだけ傷つけた?
「陣平や、降谷さんの気持ちはよく分かるから」
「……」
苦い笑みを見せる雪乃は恐らく。
俺が思ってたよりもずっと聡くて、優しい人間だ。
きっと彼女自身が受け入れた人間には、トコトンその性格が発揮される。
そう、諸伏みたいに。
「くっ、くくく。似た者同士」
「誰と誰が?」
「ナイショ」
思わず吹き出すと、こっちを見上げて首を傾げるから、まだ繋いだままの掌にそっと力を込めた。
「一日も早く誤解が解ければいいとは思ってたけど、やりすぎ」
「どの辺りが?」
「全部」
待ち合わせ場所に着いた途端、ムスッとした諸伏の小言を聞くハメになった。
「ってか、お前狡ぃわ」
「オレはそう言ったはずだし、何も知らないよ」
シレッと、バッサリ切られた。
だからオレは出逢った当初から雪乃は大丈夫だと言った。ってのと、盗聴器の件は知らないと。両方の返答。
が、盗聴器だけは納得行かねえな。
あんなタイミングで二回、いや三回も電話して来たくせに、仕掛けてないわけねぇだろうが!
こんな時だけ公安か!
「??」
椅子に座った雪乃は、俺と諸伏の顔を見比べて首を傾げた。
「何か飲む?」
「うん。アイスミルクティ」
雪乃はメニューを見て頷くと、すっかり素の表情と雰囲気を纏う諸伏に答える。
年相応の、可愛いらしい表情で。
この二人、普通にカレカノじゃねぇか。