第2章 *File.2*
「これから、どうしますか?」
イライラする原因は、先ずこれだ。
多分年齢的に変わらないはずなのに、敬語。
それも嫌悪以外の感情を表に出さないし、それ以外は機械みたい無表情で、口調に感情が出ても怒りだけ。
「……?」
映画館を出ると、すれ違う男が数人こっちを振り返る。
その視線の先は…?
コイツと歩いてる、から…?
「何か?」
「……」
周囲を見回して気がついた。
ちっこいナリしてるけど、黙って立ってるだけで、かなり美人っつうか、十分可愛い部類に入るわ。
地味なワンピースを着てるけど、出るとこ出てるし。
「諸伏といる時もそんなんかよ?」
「若干マシかと。彼が私に敵意を向けたのは、初対面のあの日の一度きり。彼の真意がどうであれ、あの日以降は敵意も悪意も嫌悪感さえも全く見せない人なので……逆に、優し過ぎて怖い」
ポソリと付け加えられた一言に、目を見張る。
自分はそこまで優しくされていいはずがないと、自覚があって困惑している?
だからと言って、諸伏の家から出ることも叶わず、身の置き場がないと?
元の世界に帰る方法も分からない上に本人は亡くなったと自覚があるし、この世界でも居場所は何処にもない。
ってことは、無表情も無関心も無感情も全部ワザと、なのか?
『勿体ない』
諸伏のあの言葉の意味は?
本当の、望月雪乃の姿は?
笑ったら、どんな表情になる?
驚いたら?照れたら?哀しんだら?泣いたら?
俺は何一つ知ろうとしなかったし、興味も沸かなかったし、最初から厄介者だとコイツの存在自体が気に入らなかったし、受け入れなかった。
だからからの、彼女の俺に対する態度。
よく考えれば、当然か。
寧ろ、それに便乗して自分のことなんか放っておいてくれればいい。自分には関わらなくていい。と、出逢った当初から、俺とゼロを拒絶している。
言いたい事も最低限しか言わずに、飄々として弱味を見せることなく、自分は何時何処にいても一人なんだと諦めている。のか?
そりゃ淋しいし、悲しくもなるし、泣きたくもなる。人間として、ごく当たり前の感情だ。
あー、悪いのは全部俺だ。