第2章 *File.2*
「……!」
しばらくすると一つの映画が終わったのか、平日の割りにたくさんの人が一斉にわらわらと出口に向かってくる。
そんな中、小柄な体格を利用して上手い具合に人混みに紛れるように、こちらに向かって歩いて来る探し人を、ようやく見つけた。
「はい、確保」
「……」
「だからそのあからさまに迷惑そうなツラすんの、止めろ」
背後からガシッと腕を掴めば、心底嫌そうな顔をして、振り返った。
お前一人のせいで、俺らも大概迷惑被ってんだよ!
「勝手に一人でどっか行くな!」
土地勘が全くないくせに!
それも、現役警察官の俺を出し抜きやがって!
「すみませんでしたー。せっかく水曜日だったから、映画館にしたのに」
人の気も知らねぇで、一人呑気にレディースデーかよ?!
悪そびれた様子は一つもないセリフから察するに、映画の内容にも不服だったようだ。
「あ?仕事に戻る?悪かったな、急に呼び出したりして」
先にゼロに連絡を入れると、そういうことらしい。
「……」
視線を感じてその主を見下ろせば、僅かに目が腫れてるような気がした。
「ちょい待て、ゼロ」
「ご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした」
「……だそうだ」
手渡したスマホ越しに謝罪するだけして、返事は一切聞かないけどな。
無言でスマホを突き返した上に、言い逃げかよ。
「ああ。じゃあ、またな。お前、泣いただろ?」
「映画を見て泣くことは、別に珍しいことではありませんが」
可愛くねえ!
通話を切るなりそう切り出せば、素知らぬ顔で返答しやがる。
そう。
まるでバレた時には、この返答を予め用意していたかのように。
違うだろ?
一人で泣くために、映画館を選択したんだろうが。
わざわざ、カバンに付けた盗聴器を壊してまで。
気づいたことにも驚いたが、この様子だと家に仕掛けてあるのに気付いてやがるな。
今公開中の映画の何処に、泣ける要素があるんだ。アクション物ばっかだったろうが!
クソ!
コイツといると、調子狂う!
「合流するまで時間が掛かる?お前、何してんだよ」
いいタイミングで、諸伏からの連絡が入る。
「しばらく二人でごゆっくり?って、お、おい!」
「……」
だから、あからさまに嫌そうな顔するな!
全くを持って、俺も同意見だ!
ってか、アイツ、コイツが映画館にいるって知ってたのか?
