第2章 *File.2*
「松田は気付いてた?」
「あぁ?」
「どうして午後からでいいって、雪乃が言ったか」
「俺とメシ食うのが嫌だって、昨夜ハッキリ言ってただろ」
こっちだって願い下げだ!
あー、思い出しただけで、腹が立つ!
「あれはウソ。せっかくの非番を自分のせいで潰してしまうのなら、せめて午前中だけでもゆっくりして欲しい。ってこと。実際今朝は、ゆっくり眠れただろう?」
しばらくして合流した諸伏は、ため息交じりに教えてくれる。
「…アイツが、そう言ってたのか?」
「いや」
「深読みし過ぎだろ」
くだらねえ!
「警察官、だもんね。って」
「ハア?それだけ?」
「それだけ。でも、眼が優しそうに笑ってたよ」
「お前、アイツの観察日記でも付けてんのかよ」
と、我が友ながら引いた。
あんな得体の知れない無愛想な女が、優しそうに?絶対ねぇな。
「何時からそんな趣味を?」
「ゼロ、大丈夫?」
「ああ。で、彼女が行きそうな場所は?」
「そこら辺の飲食店は、とりあえず探した」
「御手洗に行ったきり、帰って来ないって」
「ちゃっかり荷物は俺に預けてな」
「あの性格だと、ホテル路線はないな」
「電車に乗るって選択肢もねぇだろうし」
アイツは実は生まれも育ちも関東圏ではないらしいから、それはない。
「となると、長時間居れて安いトコ?」
「図書館は近くにないし、考えられるのは映画館、カラオケ、ネットカフェ」
「盗聴器は?」
「壊しやがった」
GPS付きの。
だから、呼んだんだっての!
「松田、君と二人でいるのが本当に嫌だったか…」
「若しくは一人きりになりたかったか。でも雪乃はね、君達が思ってる以上に、きっと松田のこともゼロのことも好きだよ」
「お前、警察官のくせに、どんだけ平和でお人好しなんだよ」
「有り得ないな」
「勿体ない。オレはネットカフェに」
どこら辺が?
「へいへい。じゃ、そこの映画館」
「俺はカラオケを探すよ」
三人三様で、分かれた。