第18章 *File.18*
「こんな夢を見たのは、初めてかも」
「正夢にならないように、祈るよ」
「ホントに。で、何時帰って来たの?」
「半時間ほど前かな?」
「髪、濡れてる」
細い指先が、まだ濡れたままの前髪にそっと触れる。
「乾かして来るよ。また寝る?」
「起きるー。お腹空いた」
「今日のご予定は?」
「特に、ないよ」
「では、オレとデートしませんか?」
その為に、徹夜で報告書を書き上げて帰って来た。
本来なら、今日すべき仕事を全てやり遂げて。
雪乃のシフトは毎月手渡される度にスマホに収めるし、仕事の内容上、公休が急に変更されることはほぼ無い。
「お昼からでよければ」
「昼から?」
「午前中は景光は睡眠取って。徹夜明けに、朝からデートはしてあげません」
「してくれないんだ?」
「絶対にしません!」
「⋯有難う」
断固として言い張るのは、オレの体調を心配してるから。
「私は洗濯に掃除をしたりするから、ゆっくりね」
「一緒に寝ない?」
「寝ません!意味無いじゃん!」
「何故?」
「こういうことになるから」
「こういうこと?」
「景光っ!」
リビングで背後から小柄な身体をすっぽりと抱き締めれば、じたばた暴れて抗議が入る。
勿論、本気で嫌がったりはしていないのは分かってる。
「癒されるよ」
変わらぬキミの温もりに。
パジャマ越しに伝わる肌の柔らかさに。
鼻腔を擽る、甘くて優しい香りに。
「⋯私も」
「雪乃も?」
「うん。私は景光を愛してるから、こうして景光に触れられる度に嬉しいし、安心する」
ピタリと動きが止まるなりこちらを見上げると、ふわりと笑顔を見せた。
「⋯ゴメン」
「ん?」
「やっぱり予定を変更する」
「?」
「今から雪乃を愛したい」
「へっ?」
「だから、一緒に寝て欲しい」
「!!」
直球でお願いしたら、キョトンとした表情が一転。
ポンと頬が真っ赤に染まる。
「我慢出来ないんだけど、ダメ?」
「うっ」
「⋯⋯」
ニッコリ笑えば、効果覿面。