第18章 *File.18*
「……」
そういうこと、だったのか。
出会ってからの雪乃の言動や表情を思い出し、脳裏で複雑に絡み合うこの感情を、今どう言葉に表していいのかが分からなくて、暫く黙り込んでしまった。
「ふっ」
「?」
「話を聞いた反応が、工藤君とまるっきり同じだよ」
「……」
この人は知ってるな。
アイツと俺の関係を。
顔を上げて合った視線は、俺とアイツの眼を重ねて見ているような気がした。
「想定外、だったかい?」
「正直、初対面の雪乃から聞いた話が半信半疑だったと言うのもあります」
「分かるよ。普通は有り得ない話だと、とてもじゃないが素直には信じられない話の内容だろう?」
「でもそれを一番最初に体験したのは、諸伏さんですよね」
「ああ、あの時の俺はしっかりパニックったよ。真夜中に、アイツらを此処へ呼び付けるぐらいには」
「雪乃が一番冷静だった?」
「…そう。いや、正しくはきっと、目が覚めて現状を理解した瞬間に、全ての感情を隠し切った。だと思うよ」
「…今でも?」
「んー。恋愛に関しては、かな」
「お互い、ライバルが多いですよね」
「そうハッキリ言い切られると複雑だけど、君には実際に雪乃を助けてもらったから、今更誤魔化しても仕方ないか」
眉を顰めて、少し困った表情。
「ですね」
「参ったな」
「顔は全然参ってるようには見えませんよ」
「そんなつもりはないよ」
「何があっても誰よりも雪乃を愛してる。そう、顔に書いてありますから」
「否定はしないな」
寧ろ、大絶賛肯定してるだろ。
「……」
「沈黙の意味は?」
「羨ましいのか、呆れるのか、重過ぎるのか、色々と」
「正直者だな」
「貴方にウソは通用しないので」
「くくくっ」
で、さり気なく否定しないんだよな、この人。
公安警察はマジで恐ろしい。
というか、諸伏さんとあの公安が特別なのか?
「雪乃も大変ですね」
「そう思うだろう?」
「えっ?違うんですか?」
「ああ。本当に辛いことや周りの人間を傷つけるような感情は、オレでさえ気付かないぐらいに心の奥底に完全に隠し通してしまうから、爆発する寸前まで気付かない」
「……大丈夫です」
あー、何か凄く分かる気がする。