第18章 *File.18*
怪盗キッドとして初対面で雪乃自身からこの話を聞いた時、少し困った顔で『一生オフレコで』なんて軽いノリで言っていたから気になって個人的に調べはしたけど、詳細は分からなかった。
『証人保護プログラム』を受けていたことと、現状況の雪乃以外のことは、何一つとして⋯。
「一つ誤解しないで欲しいのは、雪乃は決してこんなことを望んではいない。これはオレ達が勝手に決めたルールであり、実の所、雪乃本人には猛反対されてる。それでもオレ達は、これだけは譲れないと、無理矢理言い聞かせた」
「…オレ達?」
「オレと降谷、松田、伊達の四人と、ウチの裏の管理官だよ」
「他に知っているのは?」
「工藤君だけだ。工藤君はこの条件を呑んだ上で、話を聞いた。今ならまだ、選択肢は君にある」
「…何故、アイツが?」
「組織の件が解決する前に、彼自身が勘づいた」
「なるほど」
江戸川コナン、か。
今は元の姿の工藤新一だが、彼は自他共に認める厄介な名探偵だ。
「条件は承知したので、俺は聞きたい。俺にとって雪乃は、とても大切な人だ」
今では知人を通り越して、実の姉みたいに。
出会いは本当に偶然だった。
だが、きっと俺と雪乃が出会うことは互いの人生で必然だったと、今なら言える。
「…雪乃と出会い、彼女と親しくなった人は、みんな口を揃えて同じことを言うよ」
「分かる気がします」
第一印象は、不思議な人。
だけど彼女を知れば、何時も穏やかで、優しくて。雰囲気は柔らかくて可愛いらしいのに、芯は強くて逞しくて。なのに、何故かそれ以上に色んな意味で聡明過ぎて。
傍にいる人間が、驚くよりも心配になるぐらいに不安定な時がある。
その理由が知りたい。
これから先の人生も、雪乃の傍にいたいし、護りたい。
俺にとっての雪乃は、恋心ではなくて身内にも等しい存在だと思っているから。
「雪乃の秘密は他言無用。墓の下まで持って行くと、今此処で誓えるかい?」
「はい」
諸伏さんの目を真っ直ぐに見返して、俺はそうハッキリと頷いた。