第17章 *File.17*(R18)
「ふふっ。母親に似たの」
「…一度会ってみたかったな、キミのご両親に」
「私も会ってみたかったよ、景光のご両親に」
「両親は無理だけど、兄さんには会えるよ」
「高明さん、ですか」
「ああ」
「幼馴染で同じ長野県警の、敢助さんも由衣さんも知ってますー。高明さんは声も好きー」
「ん?」
「……何でもない」
しまったと言わんばかりに、視線をそらされた。
声も、と言うことは、 兄さん本人も好きと言うことだ。
やはり、これからもそんな人物が増えるのか?
怪盗キッドもその一人、なのか。
間違いない。
「今、聞き捨てならないセリフが聞こえたんだけど?」
「気の所為。景光の空耳です」
「…本当に?」
「うん。ホントのホント」
「じゃあ、オレの目を見て言って」
「はぅ。ち、近いっ!」
ローテーブルとの間に割り込み正面を陣取ると、距離を置こうと慌てて腕を突き出して来るから、片膝をソファに乗り上げ、両手は片手で掴んだ。
「何か不都合でも?」
「ひゃうっ」
耳元で囁けば、肩を竦める。
「実の兄を、嫌いと言われるよりはいいけどね」
「……」
「そう言われると、会わせたくなくなるよ。実際に会ったら、キラキラした目で兄さんを見つめそうだから」
「……」
「全く、こういう時はバカ正直だな」
そこで直ぐに否定しないんだから、ズルい。
「ご、ごめん」
「でもやっぱり気に食わないから、キスするよ」
「ほえっ?」
瞳をパチクリさせた雪乃を眺めやってから、間を置かずに唇を重ねた。
「「……」」
存分にキスを堪能した後。
「そういう意味か」
「…うん?」
ゆっくりと瞼が開かれる。
「キスをする前の、雪乃の表情」
「だって、したい、して欲しい。は、あっても、する。は、ないなーって」
「確かに。じゃあ、今から雪乃を抱くよ」
「はいっ?」
「一週間ぶりだし?」
「そ、それは…」
「それに、もう日付が変わるよ」
身体を回転させて雪乃を膝の上に乗せ、リモコンを手に取ってテレビのスイッチを押すと、今年も残すところ一分を切っている。