第16章 *File.16*【File.10 番外編】(R18)*
「今晩は何食べたい?」
「作ってくれるの?」
「もちろん」
洋服や雑貨屋を回り、気に入った物を見つけて少し買い物をした後、食品売り場でショッピングカートを押しながら、隣を歩くオレをキラキラした眼差しで見上げている。
「やった!」
オレの言葉一つで、子供みたいに無邪気な笑顔を見せてもらえるのは、素直に嬉しい。
雪乃、キミが傍にいると幸せばかりだ。
「とりあえず、サラダ系は欲しい」
と、家を出る前に撮った、冷蔵庫の野菜室の写真をスマホで確認するので、上から覗きこむ。
「トマトとレタス、きゅうりもいるかな?」
「…景光、近い」
「ん?」
ワザとなのに、気付いてる。
「嬉しいけど、恥ずかしいデス」
「はいはい。で、食べたいものは決まった?」
「ハンバーグ」
「海老フライ付?」
「うん!」
「承知しました」
こうしてたまに食品売り場で二人で買い物してると、恋人というよりは新婚気分になるよ。
「汁物はスープがいい」
「玉葱はハンバーグに使うから、コーンにしようか?」
「うん」
野菜をカゴに入れつつ、キョロキョロと売り場を見回しては、少しずつ購入する物を増やす。
何時もはオレの食事の加減で、量が多いと少量の物に変えたりしてもらうけど、暫くはその必要はない。
「早く…」
「うん?」
「雪乃にオレの妻になって欲しいと思っただけ」
「っ!?」
身長差から屈んで耳元で囁けば、ピタリと足が止まり、後ろを振り返ると、カートを握り締めたまま俯いている。
少し戻ってその顔を覗き込めば、 耳まで真っ赤に染め上げていた。
「何か、色々とごめん」
嘘偽りは全くない。
寧ろ、今の感情が思わず言葉に出ただけだが、どうやら困らせてしまったらしい。
「ち、違うの」
「…何が?」
ゆっくりと顔が上がり、視線が合う。
眉を寄せて困っているようだけど?
「わっ、私も同じ気持ち、だから…」
「それはよかった」
ちゃんと信じてくれてるのか。
雪乃からは、疑いの表情も感情も一切伝わって来ない。