第15章 *File.15*(R18)
「…雪乃?」
「ぎゅってして」
「?」
ゼロと三人でポアロの片付けをしてから、家に帰って来た。
玄関先で景光がスリッパを履くのを確認すると、後ろを振り返るなり前から抱き着いた。
不思議そうな顔をしながらも、景光は願い通りに優しく抱き締めてくれる。
景光に包み込まれて深呼吸すると、やっぱり落ち着いた。
景光の腕の力強さとか、引き締まった身体の固さとか温もりだとか、香りだとか。
此処が、私の居る場所。
「まだなんか身体が強ばってるみたいな気がして」
「怖かった?」
「さすがにそれは全然ないよ。あー、そういえば」
「萩原にも、された?」
「えっ?」
「ハア。全くアイツらは、油断も隙もないな」
どれだけ鋭いってか、勘がいいの?
思わず顔を上げたら、深いため息が降って来た。
「私の、せい?」
「雪乃は可愛いから。容姿だけじゃなくて、その心もね」
誰よりも大切な貴方を不安にさせているのなら。
「私は、どうすればいい?」
「雪乃は雪乃のまま、ずっとオレの傍にいて。それから……」
「それから?」
「オレだけを愛して」
何時もは涼し気な目元をふと緩めた、穏やかでいて優しい笑顔がそこにあった。
「うん」
私、景光のこの表情、スゴく好き。
心が満たされて、目がうるうるして来た。
「どうして泣きそうに?」
「今この瞬間が、ただ幸せで」
「雪乃が幸せなら、オレも幸せだ。ほら、何時までも此処にいたら、風邪をひく」
「わっ」
ひょいと軽々と横抱きにされたから、咄嗟にしがみつく。
「愛してる、景光」
「…有難う」
少し瞳を見開いた後、景光は嬉しそうにふわりと微笑んだ。
「ふぁ~」
お風呂にも入り、日付が変わってしばらく経った頃。
再度戸締りを確認して、電気を消し、欠伸を一つしながら寝室の扉を開けた。
「雪乃」
「!?」
寝室の中から名前を呼ばれて顔を上げると、そこにはパジャマ姿で広いベッドで横になり、優しく笑う景光が掛け布団を捲って、
「おいで」
と、私に向かって手を差し出していた。
「!!」
だ、ダメだ!
鼻血出る!!
咄嗟に閉めた扉の向こうでしゃがみ込んで、真っ赤になっているだろう頬を隠した。