第15章 *File.15*(R18)
「いらっしゃい」
「ご心配、ご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした」
「それは雪乃じゃなくて…」
クリスマスケーキを全て売り切り、本日の営業を終えたポアロの入口で、ゼロの姿を見るなりペコリと頭を下げた雪乃を見た瞬間、彼の視線が俺に向いた。
雪乃が寝ている間に、記憶が戻ったことはみんなに伝えておいた。
「オレのセリフだ。すまなかった、ゼロ」
「こんな非常事態は、これで最後にして欲しいものだな」
「ああ。それから、有難う」
「本当に」
「ふふっ」
「「?」」
楽しげな笑い声に、オレとゼロの視線が同時に雪乃へと下りる。
「何があってもずっと仲良しさん、だね」
「「……」」
幼馴染だし、な?
視線で言葉を交わす。
「お陰様で」
ゼロはふっと笑うと、雪乃の髪をポンと撫でてカウンターへと歩いて行った。
「怒ってない?」
「ああ。全く」
「そっか」
雪乃は肩を撫で下ろして、奥のカウンター席に座る。
「何か手伝おうか?」
ポアロの看板娘の榎本さんも帰った後で、今はゼロ一人だ。
「助かるよ、景光」
カウンターへ行くと、ゼロからエプロンを受け取った。
パシャ
「く~っ」
「「ん?」」
パシャ
「…雪乃?」
ちょー悶絶!
ツーショット、それもエプロン姿!!
「コイツ、さっきから一人でどっか違う世界に行ってんぞ?」
これはもう、永久保存版でしょっ?
「「ヤレヤレ」」
二人は同時にため息を洩らす。
「お前、写真の腕はいいよな」
「でっしょ〜。ん?は、は余計だから!」
後で、みんな撮りまくろう!
「顔に全部出てんぞ?」
「陣平も撮るから、ご心配なく」
「いや、別に撮っていらねえし」
「なんで!」
「写真撮られて喜ぶ歳でもねえだろ」
「そうして、歳取って老けて行くのねえ」
「ムッ」
「わっ!」
髪をわしゃわしゃされる。
「俺より年上のくせに!」
「見えないでしょ?」
乱れた髪を直しながら、フフンと笑う。
「自慢か!」
「うん、自慢!」
「オマケにドヤ顔かよ!」
「もちろん!」
少し悔しそうな、陣平の表情が可愛い。
「低レベル」
カウンター越しから、ゼロの呆れた声と視線。