第15章 *File.15*(R18)
「本当に困ったお姫様だよ、キミは」
こんな時は歳相応の女性になる。
でもそれさえもキミの魅力の一つで、オレは雪乃に魅かれるばかりだ。
「……お姫、様?」
「雪乃がオレの元へ舞い降りて来た、あの瞬間からね」
すっかり目が冴えた様子で、首を傾げる。
「私がお姫様なら、景光は、私のたった一人の王子様ね!」
「!」
満面の笑みの後、ギュッと抱き着いて来た。
この状況を、オレにどうしろと?
素直に嬉しい、けど!
この一ヶ月、ゼロとは何もなかった。
それだけは、心から安心したよ。
警鐘音を鳴らした、オレの本能に拍手喝采だ。
これ以上待たせてしまっていたら、万が一があったかもしれない。
「あ!」
「あ?」
「クリスマスケーキは食べに行かないと」
「……一応聞くけど、何処に?」
「ポアロ!」
「……」
今日は日付が変わって、クリスマスか。
それはゼロ手作りのクリスマスケーキ、しかないよな。
さっき記憶が戻ったオレには、何も言う資格はない。
こういうことにならなければ、元々クリスマスの今日は二人で過ごす予定で、お互い休みを合わせていたんだ。
「何時?」
「6時に集合」
何時ものメンバーが集まる。しかない。
「それまではゆっくり出来るな」
「えっ?」
「うん。家に帰って、仕切り直し」
「はい?」
このまま、キミを抱かないワケがないだろう?
さすがに此処でキミは抱けない。いや、抱きたくはない。
「大丈夫。冬の夜はまだ長いよ」
「理解致しかねます」
「服を着替えようか」
「えっ?ちょ、ちょっと待って!」
再び指輪をポケットに入れ、遠慮無しにパジャマのボタンを外すと、腕を掴んで慌てて止めてくる。
「待たない」
「!」
笑顔でバッサリと言い切ったら、もう止められないと諦めたのか、困った表情で大人しくなった。
それから直ぐに半ば強制的に、自宅へと連れ帰った。
真冬の深夜に突然押しかけて叩き起こした上に、なのは大変申し訳なく、心が痛んだけれど。