第15章 *File.15*(R18)
「おーい。起きろー」
「……?」
「何時までも寝てると、ゼロに取られちゃうよ?雪乃チャン」
「!!」
「思った以上に、雪乃チャン効果は凄いねー。さっきまで、いくら声をかけても起きなかったくせに」
「はっ、萩原?!」
聞き捨てならないセリフに思わず勢い良く身体を起こしたら、クククッと楽しげに笑う旧友が何故か目の前に居た。
「はい。おはよ」
「お、おはよう?」
腕を引っ張られながら立ち上がる。
「中身は変わらないねえ。でもま、すっかりイイ男になっちゃって」
オレの頭のてっぺんから足の先まで一通り見つめると、感慨深げに一人頷いている。
「…有難う?」
「雪乃チャン、ずっと待ってる。お前が戻って来るの」
「ああ」
「諸伏、肝心のお前が迷ってばっかでどーすんの?ゼロも言ってただろ?辛いのは待ってる側だって」
「……」
「それとももう諦めて、ゼロに雪乃チャンをあげる?ゼロなら、雪乃チャンを幸せにするんじゃない?それはもう、毎日全身全霊の愛情を込めて」
「…それだけは絶対に嫌だ」
面白がってニヤニヤ笑う萩原から、視線をそらした。
掌をきつく握り締めて。
雪乃の傍で穏やかに笑う、優しいゼロの姿が安易に想像が出来るからこそ、余計に嫌だ。
「雪乃チャンのこと、覚えてないのに?」
「オレが彼女を愛していたと言うことは、間違いない」
「…何故?」
「オレの心が、そう言ってる。気の所為なんかじゃない」
「……はっははは」
「?」
今の笑うトコ?
「良くも悪くもずっと仕事一本で生きてきたお前が、こんなにも一人の女に惚れ込むとは、親友として嬉しいよ」
両肩に掌を置かれ、近い位置で視線が合うと、バチリとウインクされた。
そういう意味、か。