第14章 *File.14*
「あの事件って、松田さんが乗り込んだ観覧車には爆弾が仕掛けられていたって…」
去年、松田刑事本人から聞いた。
それと同時に、同一犯によって米花中央病院に仕掛けられていた、たくさんの爆弾。
病院にいる大勢の人質を陰で守り、その爆発を逃れられたのは、もしかしなくても雪乃さんの助言を受けた、諸伏さんと降谷さんが事前に解除した、から?
だけど、雪乃さんがそれ以上のことを誰にも語らなかったのは、最悪の事態を考えたからだ。
「もし、雪乃の中の記憶の話とこの現実が違っていたら、何も知らずに観覧車に一緒に乗り込んだオレも、雪乃と松田と共に爆発に巻き込まれただろうね」
「!!」
やっぱり…。
松田さんにとって、雪乃さんは生命の恩人だ。
「その翌年、組織に正体がバレたオレも死んでいた。またその次の年には、伊達班長も交通事故で亡くなっていた」
でも、今現在みんな生きている。
目の前にいる諸伏さんも、松田刑事も伊達刑事も。
だったら…。
「降谷さん、は?」
「恐らく、たった一人、生き残った」
警察学校の同期五人のうち、たった一人?
「恐らく?」
「雪乃が言うには、オレには死を含めて謎が多いそうだ」
「ふっ」
「?」
「雪乃さんらしい。諸伏さん、貴方の死の真相が知りたかったから、ってことですよね?」
「…だが、雪乃本人にしたら、戸惑いと困惑だらけだったと思うよ。自分は死んだと言う自覚があっただけにね」
「…逞しい、ですね」
聡明な雪乃さんはこの世界に来た瞬間から、様々な思いを抱えて葛藤しながら生きて来た。
表に出さないだけで、諸伏さんに支え護れながら、きっと今でもそれは変わりない。
「本当に。だから、お願いしてもいいかな?あんな過酷な約束をさせた上に、なのは、重々承知はしてはいるけれど」
信号が赤に変わり、車がゆっくりと停車すると、真っ直ぐに向けられた、一人のオトコとしての真剣な眼差し。
「俺で良ければ、何時でも」
それをしっかりと受け止めて、応えた。