第13章 *File.13*
「だから景光も、私の傍でずっと笑ってて」
「参ったな。降参するのは、やっぱりオレみたいだ」
「でもね、無理して笑うのはナシよ!」
「雪乃もね」
朝から勇ましいキミを見せつけられたら、このまま思いのままに、抱きたくなる。
本当に、可愛くて困ったお姫様だよ。
「ふふっ」
「そんなに?」
「すっごく嬉しい」
プロポーズをしたことだし、ふとケジメだと思い立って長らく伸ばしていた髭をキレイに剃ったら、オレの顔を見た瞬間に、雪乃がその眼をキラキラさせて抱きついて来た。
「う〜ん。童顔がバレる」
今更、だけど。
「違うよ。可愛いイケメン度が上がるの。でも誤解はしないでね。景光が景光だから、私は好きなの」
「今日はモテ期絶好調?」
可愛いは余計かな?
余り考えたくはないけど、年齢的にはもう立派なオジサンだし。
「……誰に?」
胸元でオレを見上げる雪乃が、膨れっ面をする。
「雪乃に決まってるだろう?」
朝起きてから、キミにしか逢ってない。
「……私?」
キョトンとして、首を傾げる。
「オレは雪乃だけ。この先ずっと」
「景光はズルい。私ばっか喜んでる」
「オレがそうしたいからしてるだけだよ」
「そういうトコがズルいの!」
「雪乃が喜んでくれるのが、オレの喜びだから」
「ムムッ」
「じゃあ、オレを喜ばせて」
「うん」
「キス、して」
「なぬっ」
ピシッと固まった。
「どうする?」
「キス、したい」
次の瞬間には、年相応の表情に変わる。
「景光」
「ん?」
「愛してる」
まるで抱いている時のような色香を放ちながら、伸ばされた両方の掌が頬を包み込み、重なった唇。
「!」
数えきれないぐらい何度も触れたことがある柔らかな唇が触れたその瞬間、全身がゾクリとした。
だけど、それは決して嫌なものではなくて、寧ろ男としての悦びを感じるもの。
「……っン……っはぁ」
次第に重なっていただけの唇から互いに舌を差し入れて、深いものとなる。
ダメだ。
止まれそうにない。
昨日の今日。
止めないと。