第13章 *File.13*
ガタッ
「雪乃?!入るよ?!」
「ひ、景光」
オレが触れても大丈夫みたいでよかった。
最悪、男性恐怖症になるかと懸念していた。
大きな物音がしたから勢い良く部屋の扉を開いたオレが手を伸ばすよりも早く、雪乃がすがりついて来たのには、少し安心した。
「ごめ、ん」
️「雪乃は、謝らなくていい」
それだけのことをされたのはオレの所為、だろう?
今キミがこんなにも辛い思いをしているのも。
謝るのは、オレの方だ。
雪乃は何も悪くない。
「しばらく、このままで、いて」
「大丈夫、力抜いて。オレが支えてるから、深呼吸しようか」
「…う、ん」
震えながらも、ゆっくりと雪乃のペースで深呼吸をさせる。
やっぱり無意識のうちに安心したタイミングで、無意識に蓋をして抑え込んでいた恐怖が脳裏に鮮明に蘇ってしまった。
「……景光」
「ん?」
「私は、平、気」
「………」
腕の中で顔を上げた雪乃が、力無く微笑む。
「だから、ずっと……傍に、いて」
「雪乃…」
「約束、破っちゃ……ヤダ」
「ごめん」
ただ、それだけしか言えなかった。
「ごめん、ね。景光に、辛い思い、させた」
「謝るのは雪乃じゃない!!」
「!」
抑え切れずに思ったよりも大きな声が出てしまい、雪乃の身体が大きくビクリと跳ねた。
「驚かせた、ごめん」
「……謝るのは、もうお終い。それとも」
「今度こそ、嫌になった?」
安易に言葉の続きが予測出来たから、先回りをする。
「バカにしないで。誰を助けるために、此処まで来たと思ってるの?そうしたいのは…景光の方じゃないの?」
「……」
「だったら、もう、別れっんッ!」
それ以上は、キミの口から絶対に言わせない。
キスをして、唇を塞いだ。
今更、出来るわけがないだろう?
キミがいない世界なんて、オレは要らない。
そんな世界でオレは生きてる価値も意味もない。
何時になれば、雪乃に【離れる】とか【別れる】と言う不安で哀しいセリフを考えさせなくてよくなる?
良くも悪くも、人の心なんて常に変化し続けるモノだと、オレも雪乃も十分に理解してはいるけれど。