第13章 *File.13*
「雪乃っ!!」
「っ!!」
雪乃に馬乗りになっていた男は高校生の彼が倒してくれて、既に気を失っている。
「よかった、間に合って」
「ごめ、ん」
衣服は乱暴に引き裂かれていたが、彼が学ランを着せてくれていた。
駆け寄って来ながらも恐怖と安堵の涙を零した彼女の指先が、オレの上着をきつく握り締める。
「謝るのはオレの方だ」
固く目を閉じると耳元で呟いて、恐怖で震える雪乃の身体をただ、強く抱き締めた。
「彼が教えてくれた」
落ち着いたのを見計らい抱き締めていた腕を解くと、位置的にオレの後ろにいた彼の傍へ寄る。
「感謝してもしきれないね。助けてくれて本当に有難う」
「虫の知らせってよく言うだろ?」
だが、ぺこりと頭を下げる雪乃からは、照れたように視線をさ迷わせたままだ。
さっきの男らしさはなくなり、今はただの男子高校生に見える。
「こっちに」
「ん?」
手招きしながら彼に視線をやれば、気付いてくれて助かった。的なため息が一つ。
「それを脱いで、これを着てくれないか?」
「うん」
コクリと頷いて学ランを脱いだから、着ていた上着を着せる。
「ぷっ」
『??』
「お父さんと幼い娘の図」
状況が状況だからか声は抑えてはいるが、肩は震えている。
「何故?私の方が年上なのに」
「えっ?!マジで?!」
「本気で驚いてる」
「誰が聞いても驚くだろう?」
「何で?」
ムムと雪乃が口をへの字にした時、鳴り響いたのはスマホの着信音。
一瞬にして、また空気が張り詰めた。
口にはしっかりとガムテープが貼られ、手足首を縄で縛られたリーダーの男のポケットから、彼が躊躇いも無しにスマホを抜き取る。
「たまたま今一人なんですよ。此処に来る?大丈夫なんですか?」
「!?」
タップしたスピーカー越しに聞こえる電話の主、は間違いなく、オレの部下。
目を見張るほど驚いたのは、変声機も無しに彼の声音がガラリと変わったから。
電話の相手が何の違和感も疑問も抱かないほど、声音も口調も完璧に。
普通に考えて有り得ない、だろう?
ましてや彼は、高校生だぞ?
「分かりました、では」
「君は、一体?」
「心配だから、俺は隠れとくぜ」
「うん。お願いします」
あえてオレの言葉を遮り、雪乃に告げる。