• テキストサイズ

*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第1章 *File.1*


彼のセンスの良さはナチュラル的なモノなのか、はたまた実は計算高い思考もあるのかは、まだ判断し兼ねる。
出逢ったその日から居候はさせてもらってはいるけれど、同じ時間を過ごすことがあまり無いのは、彼が公安部として黒の組織のスパイをしているから。それを知っていることは、まだ伝えてはいない。

『オレがいない日も、ちゃんと湯船には入って』

私は基本シャワーしか浴びないことを伝えれば、

『疲れが取れないし、女性は身体を冷やしてはダメだろう』
『…お母さんって、呼んでも?』
『……それはイヤ。ちゃんと名前で呼んで』

と、ガックリした顔で言われた。
ゼロに料理を教えた張本人だけあって、景光はとても世話好きな人でもある。
私はと言えば、状況が状況なだけに仕方はないんだけど、情けないぐらい、ホントにただの居候だ。
だって、自分の持ち物は、飛ばされた時に着ていた衣服のみ。
生前使っていた財布どころか一円玉一枚でさえも、スマホだって当然持ってはいない。
正に文無し状態だ。
せめてこれぐらいはと、洗濯と掃除はさせてもらってる、けど。
公安部とスコッチ、ダブルフェイスの顔を持つ彼は不規則な生活をしてるから、夕食は基本一人で食べている。
でも此処に来て初めて口にした、あの紅茶の味は一生忘れないだろうなー。

『珈琲か紅茶を飲まない?』
『……いただき、ます』
『紅茶でいい?』
『……はい』
『ミルクティー?』
『はい』

何で、私が好きな飲み物をピタリと当てたの?
一口飲んで、また驚いたの。
ミルクティーのミルクはちゃんと牛乳で、紅茶に注がれたミルクの量も砂糖の甘みも、私の好みその物だったから。
喫茶店でミルクティーを頼んでも、フレッシュが添えてあってガッカリするのに。

『アッサムティー?』
『ティーバッグだけど』
『有難う、ございます』

突然やって来た、見知らぬ私のために。
あのカップ一杯のミルクティーで、どれだけ私が癒され安心出来たか、これからのことを冷静に考えることが出来たか。
貴方は知らない。
ホントは泣きそうなぐらい、どれほど嬉しかったか。
想像以上の貴方の何気無い優しさに、どれだけの幸せをもらったか。

「ヤバっ」

の、のぼせる!
顎のすぐ下まで浸かってた湯船から、勢い良くザブンッと音を立てて出た。
考え事をするのは、布団の中だけにしよ。


/ 221ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp