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*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第12章 *File.12*(R18)


「景光もゼロも陣平も班長もみんな、私と出逢わない方が、私はこの世界に来ない方がよかった?」
「!!」

一体どんな思いを抱えて、そんな言葉を口に出来る?
お前から聞きたいのは、そんな言葉じゃない。
寧ろ、真逆の言葉だ。

「そうしたら、誰も私一人なんかに振り回されることがなかったのに」

きっと、景光には言えない言葉だ。
普段の雪乃からは想像が出来ない程の、抑揚の無い、とても静かな口調で。

「俺は……」
「……」
「雪乃がいない世界なんか、もう考えられない」

初めて、雪乃に出会ったあの日を思い出す。
真夜中に景光から『女の子が天井から降ってきた!』と連絡があった時はイイ歳して、どれだけタチの悪い有り得ない冗談だ!と、驚くより呆れた。
だが、あの景光が、珍しく余りにも取り乱しているから半信半疑で家に行ってみれば、半ば呆然と困惑しきった景光のベットに眠る、何処をどう見ても極普通の一人の女性が本当にいた。
おまけに目が覚めたかと思ったら、無表情で負の感情しか見せない女を演じていたし。
当然かなりの不信感を抱いたが、日が経つにつれ雪乃の本当の性格が徐々に分かり、それは全て杞憂に終わった。
それに雪乃、お前がこの世界に来てくれなかったら今頃、俺は…。

「……ゼロ?」
「松田と班長も同じことを言うはずだ」
「……ウソでも嬉しい」

狭く薄暗い車内。
ようやく視線をこちらに向けた雪乃が、瞳いっぱいに涙を溜めて今にも泣き出しそうな表情で笑うから、狭い車内で腕を引いて抱き締めた。

「本当だ」
「……」
「俺の言葉は信用ならないか?」
「信用、してる」
「かなり怪しいな。信用してるのと、信用したい。では全く違う」
「鋭い指摘。ゼロらしい」
「否定はしないのか」
「私は弱い人間だよ」
「弱い人間が、自分の生命を懸けて二人もの人間の生命を救うのか?」
「それとこれとは別問題」
「…筋金入りの頑固者だな」

手に負えない。

「お褒めいただき、光栄です」
「残念だが、0.1ミリたりとも褒めてない」
「え〜っ!」

景光の苦労をしみじみと実感しながらも、心の奥深い場所では妬ましさもあるのも事実。

「やれやれ」

抱き締めていた腕を離すと、直ぐ近い場所で視線が合った。


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