第12章 *File.12*(R18)
「スマホ」
「はい?」
高速のSAの駐車場。
御手洗を済ませ、飲み物を片手に車内に戻って来た雪乃に左手を差し出せば、首を傾げながらも渡してくれた。
「解除」
「……はい。ゼロ?」
「お互いに依存し過ぎだ。これも万能じゃないことは、最初から分かってたことだろ?」
「うん」
「だから外せって言ったんだ。これから先もお互いに危険がないとは言えない。だが、それでもスコッチ以上のことがある確率は低い」
この機能を消去出来るのは、公安の俺か景光しかいない。
ならば今、俺が消す。
「ありがと。ゼロは何時も最良の選択をするね」
「状況と人によりけりだ」
「色々あるもんね」
「何時もその選択が出来ればいいんだけどな。っと、掛かって来たぞ」
「出ていいよ」
そう言って、助手席に座る雪乃は自分のスマホからフイと顔を逸らした。
これは捜査中の現場を見た、な。
間違いない。
だからこそ、心の、感情の整理が追いつかなくなった。
「消したのは俺だ、問題ない。家にはいないが、今は隣にいるから安心しろ」
『どうして二人きり?』
「言わなくても分かるだろ。お互い様だ」
『……』
「雪乃の気持ちも汲んでやれ」
『まだ帰れない。悪いけど頼むよ』
「高くつくぞ」
『…あげないよ』
「それは雪乃次第だな」
『!』
ここまで牽制しておけば大丈夫だろうし、お前のことだから、嫌と言うほど考えて理解するだろ?
強引に会話を終了させて、通話を切った。
「ありがと。時期を、間違えたかな」
「ったく。お前は自分の気持ちを大事にすることを学べ。アイツのことは心配要らない」
「何時も100%の保証があれば、安心出来るのに」
ただでさえ、常に生命の危険を伴う警察官で、更には公安の潜入捜査官。
「……」
「景光も、ゼロも陣平も班長も」
「!」
不安で心配な要素は、俺にもあったのか。
ポツリポツリと落とされる、雪乃の本音。
ふとした拍子に、少しずつ溜まっていた感情が雁字搦めになって、一気に爆発してしまう。
一度目は景光が告白した時、二度目は俺の声を聞いた時、三度目は今。
原因は違うようで、一つで繋がっている。