第6章 私、食べ頃です
鋭い目がこちらを刺すみたいに見る。
けど、こんな事で怯んでいては、場地圭介の彼女なんてやってはいられない。
立ち上がり、場地君の前に立って深呼吸する。
「き、今日、よかったらっ、そのっ……う、うちにお泊まりに来ませんかっ!?」
顔が沸騰するんじゃないかってくらい、熱くて震える。
怒ったみたいな顔をしていた場地君が、呆気に取られたような顔をして、私を凝視する。
「……それは、どういう……」
「あっ、あの、今日から2日間両親がいなくて……その、私としては、場地君との関係をですね……少し進めたいと言いますか……」
先程よりも表情から怒りはなくなったものの、戸惑いが混じった顔が私を見つめたまま、口を開く。
「お前、それ……意味分かって言ってんだろーな」
少し距離が縮まって、場地君の顔が近くなる。
「自分の言った言葉、頭でもっかい整理してから、しっかり責任持って口にしろ」
無責任に言ったわけでも、意味が分からないわけでもないのに、その言い方には少し嫌な気持ちになった。
ムッとして睨むように見上げる私に、場地君が少し怯んだ気がした。
私が彼にこういう態度を取るのは、初めてなのだから。
「私、この意味が分からないほど子供でもないし、無責任に口にしてるつもりもないよ。……わ、私なりに頑張って、勇気出して言ったのに……そんな言い方されたくなかった……」
可愛くないのは分かっていたけど、ついトゲのある言い方になってしまった。
引くに引けなくて、自分のスカートを握り締めた。
「っ、……」
「もう、いい……忘れて、下さいっ……」
場地君に背を向けて、引き止める言葉も聞く事をせず、私はその場から逃げた。
恥ずかしさとか、怒りとか、モヤモヤが気持ち悪くて、素早く荷物を持って早退した。
自らサボるなんて、前の私からは想像出来なかったなぁなんて思いながら、苦笑する。
誰もいない家は静かで、暗くて、少し寂しい。
人がいないのが、こんなにも寂しい気分になるなんて、知らなかった。
「はぁ……明日、ちゃんと謝ろう……」
自分勝手だった行動に自分を責めながら、ソファーに寝転んだ。
時計の音が眠気を誘う。
ウトウトし始めた私の耳に、インターホンの音が届いた。