第6章 私、食べ頃です
組み敷かれ、唇が塞がれた。
「なぁ、朝っぱらから何だけど、さ……今すっげぇ抱きてぇんだけど……」
「うん……」
首筋をまた噛み付かれ、体をビクビクと仰け反らせて高く啼いた。
そして、また抱かれて、眠る。
次に起きた時には昼を過ぎていて、シャワーを浴びて鏡の前に立った時、固まってしまった。
首周りを中心に、新しいモノから少し前のモノまで、いたる場所に物凄い量の噛み跡がある。
「く、首隠せる服……あったかな……」
苦笑しながら、噛み跡に触れた。
キスマークは少ないものの、噛み跡が彼からの愛情表現であり、独占欲だという印が愛おしくて指でそこを撫でた。
まるで、お前は俺のだと言わんばかりだ。
出来るだけ首が隠れる服を着て、軽く食べられるものを作る。
二人して食べ、洗い物をしているとやっぱり手伝ってくれると言って、隣に並ぶ。
「場地君、ありがとう」
食器を片付ける私の背後に立ち、お腹辺りに手を回してふわりと包まれる。
顔だけそちらに向けて見上げると、不機嫌な顔になっていた。
「呼び方」
髪をどけて、首を隠す襟の部分を少しズラされ、キスをされて身を捩る。
「苗字禁止。名前で、呼べ……」
首に何度もキスをされ、耳に上がってきた唇が、低く囁いて甘く噛む。
「んっ、け……すけっ……」
言うと、満足そうにニヤリと笑った。
唇が重なり、体をクルリと回転させて抱きついた。
「せっかくだし、どっか行くか」
「うん」
「どっか、行きたいとこあるか?」
聞かれて、考えたけれど、特にこれと言って思い浮かばなくて。
そもそもデートなんてした事ないし、困ってしまった。
「とりあえず、適当にブラブラすっか」
「うん」
手を繋いで二人で歩いているだけで、ふわふわして温かくて、目が合えば優しい笑みが向けられる。
この人とずっと一緒に笑って、隣に寄り添っていられたらと、願うばかりだ。
[完]