第6章 私、食べ頃です
私の頭は、先程エマちゃんの言った言葉がぐるぐるしていた。
「あわ……よくば……」
そうだ。確かに付き合っていると、いつかはそういった行為をするのだろう。
しかも、男の子ならそういう事に興味だってあるだろうし。
場地君も、やっぱりしたいと思うんだろうか。
私は、どうなんだろう。
こんなに真剣に考えた事はなかったけど、気にし始めると止まらなくて。
そして、本人に聞く勇気がなかった私は、一番聞きやすそうな男の子を頭に浮かべる。
「そりゃ、さすがの場地さんでも、好きならヤりたいんじゃないっスか? 興味なさそうなんで、あんま想像はつかないっスけど」
人気の少ない体育館裏の隅の段差に二人して腰掛け、ストローを口に銜えてジュースを飲む千冬君が、目だけで空を仰いで呟いた。
数少ない知り合いの男の子を思い浮かべて、場地君の一番近くにいる千冬君に相談する事にした。
恥ずかしさはもちろんあったし、言いづらいところももちろんあったけど、凄く真剣に聞いてくれる千冬君が輝いて見える気がする。
「さん、大丈夫っスよっ! 別に女の子からそういう誘いがあっても、嫌がる男なんてそういないですしっ! 場地さんは全部引っ括めて包み込む、デカい男っスからっ! 俺、応援してるんでっ!」
明るい笑顔で、力いっぱい話してくれる千冬君に、私は感動してしまう。
「こんな相談に親身になってくれて、本当に千冬君はいい人だねっ! ありがとうっ!」
千冬君と握手をしながら、気合いを入れるように二人して頷き合う。
「探しても見つかんねぇと思ったら……お前等……こんなとこで、何やってんだ?」
「あっ、場地さんっ! お疲れっスっ!」
最近場地君と付き合うようになって、少し分かるようになった。
うん、これはあまりよろしくない雰囲気だ。
「千冬ぅ……テメェ……何、人の女に手ぇ出してんだ? テメェも偉くなったもんだなぁ……あぁ?」
やっぱり。確かに、二人して手を握って見つめ合っていたら、ひっかかるだろう。
私から千冬君の手を握ったのもあるし、相談に乗ってくれと言い出したのも私だから、これはお世話になった私が千冬君を守らなければ。
「場地君っ!」
「あぁ? お前は黙ってろ。千冬の後に話くらいは聞いてやる」