第5章 共にいる意味を
ずっと求めていた、場地君の温もりに涙が出る。
「辛い思いさせてたんだな……悪かった……」
「ううんっ……改めて場地君の優しさが分かったし、私にはやっぱり場地君が必要なんだって思えたから……」
涙を唇で拭ってくれる場地君が、優しく「俺も」と笑ってくれた。
そして、そのまままた場地君の眉間に皺が寄ってくる。
不思議に思う私は、首を傾げた。
「……なぁ、ちょっとだけ、先に進んで、いいか?」
「え? あ……っ……は、はい……」
察してしまい、顔に熱が集まる。
「嫌だって思ったら、すぐ言えよ?」
「思わないから、大丈夫」
恥ずかしさだけで、場地君に触れてもらえるのは嬉しい事だから。
触れるだけのキスを何度も繰り返して、触れては離れる唇の音と、その後自然と絡められる舌が奏でる音に、耳が犯され興奮が更に加速していく。
「んっ、はっ、ふぁ……」
「はぁ……の唇……何か、すっげぇ……甘ぇ気がするっ……」
甘いのは場地君自身もだと、言いたいのに頭がふわふわして言葉が出ず、酔いしれる。
お互いの唇を貪る事が長く続き、唇が離れる頃には唇がジンジンとするのに、頭までもが痺れているような錯覚になる。
息を切らす私の首筋に、場地君の唇が這うと、くすぐったさの中に何か不思議な感覚を覚え、身を捩る。
場地君の服を握りしめ、唇の感触に熱が上がる。
「はぁ……匂いまで甘ぇな……女ってみんなこんなん?」
「わ、からなっ……んっ……」
服が少しズラされ、鎖骨近くにピリリと軽い痛みが走る。
強く吸われ、少し噛まれたのが分かった。
「これは、気に入った……」
自分が付けた赤い印と噛み跡に、満足そうに笑う場地君が可愛くて。
私のスマホが震え、帰宅する事に。
手を繋いで歩く道が、いつもと違う景色に見えて、不思議な気持ちになった。
離れたくなくて、手を握る力を強くした。
家に着いて、なかなか離れられなくて、何か話すわけでもなく向かい合っていると、場地君の長い髪が肩に掛かり、唇が温かくなる。
触れるだけの一瞬のものだけど、心までも温かさが広がっていく。
そんな時、背後の扉が開いた。
現れたのは父で、最初の頃より表情は柔らかい。