第5章 共にいる意味を
部屋で立ち尽くす私に、場地君が座るよう自分の隣の床をポンポンと叩く。
「ちゃんだっけ? 紅茶でよかった? いやぁー、女の子がうちに来るなんて初めてだから、奮発していいヤツ入れちゃったわー」
楽しそうに笑う場地君のお母さんが、場地君の頭を手で掻き混ぜる。
「コイツ馬鹿だし、喧嘩ばっかしてるどうしようもない奴だけど、筋はしっかり通ってる奴だから大丈夫だと思うけど、何かしたらすぐあたしに言って来な」
続けて「ウチの息子をよろしくね」と言って、ニカッと笑った顔が、場地君そっくりでつられて笑った。
「あたしは出るけど、圭介、ちゃんに変な事すんなよ」
明るい笑顔を私に向けて、場地君のお母さんは部屋を出て行った。
二人になり、妙な気恥ずかしさというか、微妙な空気が部屋を包み込んだ。
その静寂を破ったのは、場地君だった。
「……痩せたか? 飯、食ってんの?」
「食欲、なくて……。場地君のせいで、あんまり眠れなかったし」
皮肉を交えて笑うと、場地君が微妙な顔をした。
「お父さんに、聞いたよ」
「あー……そうか……」
少しバツが悪そうというか、居心地が悪そうに場地君が頭を掻く。
私は場地君に近づいた。
私がそんな動きをするとは思っていなかったようで、場地君が体を後ろに動かす。
「私は……やっぱり場地君と一緒にいたい……」
眉間に皺が寄って、何か考えるように目を泳がせる。
私は最後の望みを込めて、場地君の手を握って目をしっかり見据えた。
「っ……だあぁぁーっ! ったく、お前結構大胆だよな……」
「そうかな? 今までこんなに、誰かを好きになる事がなかったから……。やっぱり欲しいものは、遠慮してちゃダメだなって思って……」
言って、私は場地君の頬に手を伸ばした。
「私は、場地君が欲しい」
「……っ……お前そんなキャラだったか?」
「場地君がそうさせたんだよ」
膝だけ床に着けて腰を上げて、場地君の首に手を回して、自らの唇で彼の唇に触れた。
唇が離れた瞬間、場地君の手が腰に回り、引き寄せられて場地君の膝の上に横向きに座る体勢になる。
噛み付くみたいにキスをされ、主導権が場地君に移った。
興奮で背中がゾワリとする。